2018 Fiscal Year Research-status Report
Investigation of functional relationship in cortico-cortical connection in pain perception and its application for treatment of chronic pain
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17KK0172
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
大澤 匡弘 名古屋市立大学, 大学院薬学研究科, 准教授 (80369173)
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Project Period (FY) |
2018 – 2019
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Keywords | 大規模脳活動同時記録 / オシレーション / 神経障害性疼痛 / 情動行動 |
Outline of Annual Research Achievements |
神経障害性疼痛モデルラットを用いて、複数の脳領域における脳活動や各脳領域間の活動連関と行動変化の相関について解析を行った。まず、神経障害性疼痛ラットを作製し、痛み閾値を測定したところ、神経障害後1週間より機械刺激に対する痛み閾値の低下が認められ、神経障害後2ヶ月まで持続していた。また、神経障害後2ヶ月において、ショ糖嗜好試験を行ったところ、ショ糖に対する嗜好性が低下していたことから、抑うつ状態である可能性が示された。次に、神経障害性疼痛時の脳活動の変化を明らかにするため、大規模多点電気生理学的測定を、無麻酔・無拘束状態の神経障害性疼痛モデルラットで行った。神経障害性疼痛の持続により、脳活動の変化が顕著に見られる脳領域が複数明らかになり、また、周波数に特異的な活動の変動を示すことが明らかになった。また、特定の脳領域間の興奮同期性や周波数依存的な情報伝達・因果性が高まることが明らかになった。特に、動物の覚醒状態に依存せず、脳活動の変化が常に認められる脳領域が複数認められ、これらの脳領域が神経障害性疼痛の持続により、影響を強く受ける脳領域であることが示唆された。この領域は、体性感覚認知に関係する脳領域だけではなく、情動面の調節を行っている脳領域も含まれていた。さらに、脳活動としては、θ帯域神経活動やβ帯域神経活動が上昇しており、γ帯域神経活動が減少することを見出した。これらの帯域神経活動において、複数の脳領域間の活動同期性が有意に変化することも明らかにした。これらの結果より、神経障害性疼痛の持続により、大脳の活動に対して大きな影響が現れ、特に体性感覚や情動を処理する脳領域の機能が著しく変化することが示され、これらの脳活動の変化が痛みの持続による抑うつ状態の原因になっている可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画では、当該年度において、大規模脳活動測定の手法を習得し、多数の脳領域から神経活動を同時測定することを目指していた。本年度の研究結果より、大規模脳活動の測定を無麻酔・無拘束の状態で行うことができ、さらに、神経障害性疼痛モデル動物の脳活動を測定して、解析することまで達成できた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度の研究成果から、複数の脳領域の興奮性が変化することがわかり、また、脳領域間の活動同期性や周波数依存的な情報伝達・因果性が変化することが明らかになった。今後は、これらの脳領域における興奮性の変化を抑制することで、神経障害性疼痛が改善するかを行動学的に明らかにし、また、大脳の活動変化に対する影響についても検討を行う。脳活動の変化を改善する手法として、光遺伝学や化学遺伝学的な手法を用いる。さらに、神経障害性疼痛モデルにおいて変化が顕著であった情動を調節する脳領域の活動制御を中心に、多脳領域における神経活動への影響についても検討を行う。最後に、神経障害性疼痛時に見られる特徴的な脳活動の変化が、興奮性神経や抑制性神経、神経系細胞(グリア細胞など)のいずれの細胞群の機能変化によるものかについても同定し、慢性疼痛の持続による脳活動へ与える影響の詳細なメカニズムについて検討を行う予定である。
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