2019 Fiscal Year Research-status Report
筋疲労の機序の解明-筋力トレーニングに伴う筋疲労耐性向上を考慮したアプローチ-
Project/Area Number |
17KK0174
|
Research Institution | Shibaura Institute of Technology |
Principal Investigator |
赤木 亮太 芝浦工業大学, システム理工学部, 准教授 (20581458)
|
Project Period (FY) |
2018 – 2020
|
Keywords | 筋疲労 / 個人差 / トレーニング / 筋の硬さ / 超音波剪断波エラストグラフィ / 筋束長 / 羽状角 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋疲労は,身体運動によって骨格筋の力・パワー発揮能力が減退する現象として定義される.基課題では,従来用いられていた筋疲労評価法に加え,超音波剪断波エラストグラフィ法を用いて筋疲労課題前後の筋の機械的性質を定量し,協働筋各筋の疲労度合を評価することにより,筋疲労の機序解明に向けた取り組みを進めてきた.このような,ヒト生体の横断研究を主とした基課題を通じて,筋疲労耐性の個人差に起因する,筋疲労様相の個人差の大きさに気付き,筋疲労耐性の変化を加味したアプローチの重要性を痛感した.そこで当研究課題では,筋力トレーニングを実施した際の筋疲労耐性の変化を検討し,疲労課題がもたらす筋疲労様相に筋疲労耐性の変化が及ぼす影響を明らかにすることにより,筋疲労の機序の全容解明に挑戦する. 2019年度は,ゲルフ大学(カナダ)で,若年者を対象としたトレーニング実験を実施した.本実験では,筋疲労耐性の個人差の要因の1つとして,筋束の長さ(筋束長)に着目し,トレーニングを通じて,異なる筋束長変化を観察できるよう,1)筋が長い状態,及び,2)筋が短い状態での等尺性トレーニングを採用した.足関節背屈筋群を対象に,8週間のトレーニングを実施した結果,筋が長い状態でのトレーニングでは筋束が伸び,筋が短い状態でのトレーニングでは筋束が変わらない結果となった.そして,筋疲労耐性が大きく改善した人ほど,筋束長が長くなっていないことが確認された.また,筋の長軸方向に対し,筋束が成す角度(羽状角)が大きく変化した人ほど,筋の疲労耐性が向上していることもわかった.以上のことから,筋疲労耐性の個人差に及ぼす筋形状の影響を明らかにすることができた.
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年度,当該研究課題に関連する研究として,1)8週間のスクワットトレーニングを実施した際の,膝関節伸展筋群の疲労耐性の個人差,2)8週間のドロップジャンプトレーニングを実施した際の,足関節底屈筋群の疲労耐性の個人差を検討した.前者に関しては,ある程度データ分析が終わり,一部のデータについては学会大会での発表を終えているが,後者に関してはデータ量が膨大になっており,現状,整理段階となっている. 一方,2019年度にゲルフ大学で実施した,8週間の足関節背屈トレーニングを実施した際の,足関節背屈筋群の疲労耐性の個人差を検討した研究に関しては,既に国際誌への論文投稿を果たしている.トレーニング前のデータを用いて,筋疲労の評価指標となるパワーの個人差の要因について検討した論文は,既に受理されている.そして,現在,トレーニング前後のデータを用いて,筋疲労耐性の個人差に筋形状が及ぼす影響を検討した論文については,査読中となっている. 以上のことから,データ分析こそ,すべてが終わっている状況ではないが,概ね順調に進展していると考える.
|
Strategy for Future Research Activity |
2020年度は,速筋線維の割合が減っている高齢者を対象に,速さを意識したトレーニングと筋持久力を向上できるようなトレーニング,どちらが疲労耐性を向上させられるのか,また,それらによって生じた筋疲労耐性の個人差が何に起因しているのか,検討する予定である.その際,高齢者の研究にも長けているDr. Powerとも,遠隔でディスカッションを進め,細かな実験プロトコルを詰める予定である.既に,高齢者の方々の協力が得られるよう,連絡は取っているものの,現状,COVID-19の影響で,実験を実施できるような状況ではないので,状況が落ち着き次第,実験に着手する予定である. 併せて,2018年度のデータ分析及び論文化を進め,(学会大会が開催されれば)いくつかのデータについては学会大会での発表も計画する.2019年度の内容も,論文化こそ進めているが,学会大会での発表は実施していないので,こちらも発表を予定している.
|