2018 Fiscal Year Research-status Report
Design of inorganic-organic materials for drug delivery of molecular targeted therapeutics
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17KK0178
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Research Institution | National Institute of Advanced Industrial Science and Technology |
Principal Investigator |
高橋 知里 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 材料・化学領域, 主任研究員 (50574448)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | 有機無機複合製剤 / バイオフィルム感染症 / ドラッグデリバリー / カソードルミネッセンス / 電子顕微鏡 / 反応場 / 相互作用 / 放射光 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、基課題である「高分子ナノ粒子キャリアの病原体との相互作用の可視化のための電子顕微鏡評価法の開発」研究を発展させ、①バイオフィルム感染症治療のための有機無機複合製剤の設計をするとともに、②作製した製剤の最適化のため最先端の電子顕微鏡群及び放射光を用いた評価系の確立を進めるものである。 2019年度に予定している海外における研究を進める準備として、2018年度は国内でバイオフィルム感染症治療のための有機無機複合製剤の設計を行った。これまでの高分子基剤を用いたドラッグデリバリーシステム用粒子製剤の設計の知識を活かし、種々の無機材料粒子を含有した高分子製剤の調製のために、材料比や攪拌速度、遠心速度、分散剤などの条件を検討した。抗菌活性評価の結果から、ほとんどの有機無機複合製剤において高い抗菌活性効果を確認している。また、調製した製剤の物性評価や電子顕微鏡(イオン液体を応用した微細形態観察手法及びナノ領域からの蛍光可視化手法)による形態観察、放射光を用いた構造評価(大気圧における液体試料の測定)を実施し、無機材料がバイオフィルム形成菌に及ぼす抗菌メカニズムの解明を試みている。最終的な目的である副作用を示すことなく高い治療効果を示す製剤を設計するために、上記の評価結果に基づき製剤設計の最適化を行った。調製に成功した製剤は、2019年度に予定している海外機関における最先端の電子顕微鏡群を用いた評価を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、(1)複合用無機材料粒子の合成法の最適化、(2) 種々の無機材料粒子を含有した高分子製剤の調製、(3)調製した製剤の抗菌活性効果の確認、(4)電子顕微鏡を用いた製剤の形態・局所分析評価、(5) 放射光を用いた製剤の構造評価を行った。上記の研究を通じて、いくつかの成果を得ることができた。 【具体的な進捗状況】 複合用無機材料粒子(銀、金、銅、亜鉛、酸化鉄粒子)の合成法を最適化し、基課題で調製に成功している高分子製剤の調製法を利用して、無機材料粒子を含有した高分子製剤の調製を行った。材料比や攪拌速度、遠心速度、分散剤などの条件探索を行い、調製法の最適化が可能となった。抗菌活性評価の結果、表皮ブドウ球菌および黄色ブドウ球菌が形成するバイオフィルムに対して高い効果を示すことが明らかとなった。電子顕微鏡を用いた評価から、銀・金・銅・酸化鉄粒子を複合した製剤の形態を明らかにしている。また、局所分析を行うことで、銀ナノ粒子を複合した高分子製剤中における銀ナノ粒子の存在状況を明らかにした。放射光を用いた評価では、高分子製剤と各種金属粒子の化学結合状態を明確にした。これらの評価結果から、金属粒子がバイオフィルム形成菌に対し、どのように抗菌活性を発揮するのかを検討している。 これらを踏まえて、次年度以降には、海外機関においてその場液中観察が可能な透過型電子顕微鏡を用いた評価を行い、様々な環境下における種々の無機材料粒子を含有した高分子製剤の挙動を明らかにする。その結果に基づき、ターゲットに対してより製剤効果を発揮しうる製剤設計を試みる。
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Strategy for Future Research Activity |
現在、実験としては概ね順調に進んでいる。次年度は、2019年4月よりフランスのパリディドロ大学にて1年間研究を行う予定である。次年度は、(1)無機材料粒子を含有した高分子製剤の液中における挙動の可視化、(2)細胞または菌中における無機材料粒子を含有した高分子製剤の相互作用の可視化、(3)電子顕微鏡液中状態における無機材料粒子を含有した高分子製剤の分解挙動の可視化の研究を進めていく。海外滞在中は、国内の研究協力者に複数種の菌からなるバイオフィルムに対する無機材料粒子を含有した高分子製剤の抗菌活性評価、無機材料粒子を含有した高分子製剤の電子顕微鏡を用いた形態・局所分析評価、放射光を用いた無機材料粒子を含有した高分子製剤の構造評価を依頼する。 得られた成果は、随時、論文および学会にて発表する予定である。
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Research Products
(5 results)