2018 Fiscal Year Research-status Report
ヒストン修飾クロストークを介した、生殖細胞運命を規定するエピゲノム動態の解明
Project/Area Number |
17KK0185
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
望月 研太郎 東北大学, 医学系研究科, 大学院非常勤講師 (20633499)
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Project Period (FY) |
2018 – 2020
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Keywords | 始原生殖細胞 / ヒストン修飾 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物は生殖細胞と体細胞とから構成される。ヒトを含む哺乳動物では、生殖細胞が唯一、精子または卵子を形成した後に、受精を経て世代の継承を保証する。生殖細胞の異常は不妊や子孫が持つ様々な疾患の原因となる。マウスの生殖細胞は、胎仔発生初期の胎齢7日頃に未分化な細胞塊エピブラストの一部から、40個程度の始原生殖細胞(Primordial germ cell; PGC)として分化運命決定を受ける。この際、少なくともBMP4やWNT3のシグナル伝達経路が重要であることは知られていたが、分子メカニズムの多くは依然として不明であった。 そのような状況において、本研究は、研究代表者がこれまでに同定した複数の酵素が調節するヒストン修飾間ならびにDNAメチル化を含めた他のエピジェネティック修飾やクロマチンリモデリング因子とのクロストークを明らかにし、そのアウトプットとして起こるマウス始原生殖細胞(PGC)分化運命決定および生殖細胞発生の遺伝子発現制御システムを、サンプル細胞数の制限を克服して、in vivo(生体内)で包括的に解明する。 PGC分化運命決定は生殖細胞の発生分化の初発段階に位置することから、そこで機能するヒストン修飾クロストークは、後の発生分化段階のエピゲノム基盤の構築に関わり、減数分裂や精子・卵子形成、受精、個体発生にも大きな役割を担う可能性が高い。したがって、本研究はヒトを含めた哺乳動物の生殖細胞の発生分化および世代継承サイクルのメカニズムの定性的・定量的な理解に大きく貢献できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の要となる超微量細胞サンプルからのクロマチン免疫沈降シークエンス(ChIP-seq)技術を、in vitro(試験管内)のエピブラスト様細胞/PGC様細胞、ならびにin vivo(生体内)のエピブラスト/始原生殖細胞(PGC)に最適化するための条件検討にやや時間を要したため。
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Strategy for Future Research Activity |
1)ヒストン修飾間のクロストークがどのような遺伝子座で起こるかを調べる。 酵素遺伝子が欠失(ノックアウト(KO))された胎齢7.5日のマウス胎仔から、PGC形成を起こさなかったエピブラストまたは減少したPGCを、野生型の胎仔からPGCを、7遺伝子それぞれについて採取する。なお、各マウスには予めBlimp1-Venusトランスジーン(Blimp1はPGC特異的なマーカー遺伝子)を持たせることで、PGCをVenus蛍光陽性細胞として識別・分取できる。それらをサンプルとして、微量細胞に最適化されたクロマチン免疫沈降シークエンス(ChIP-seq)を、7つの酵素が調節するヒストン修飾に対する抗体を用いてそれぞれ行う。KOと野生型とにおけるエンリッチメントの変化(亢進あるいは低下)から、全遺伝子座における各ヒストン修飾間のクロストークを抽出する。 2)各酵素遺伝子のKOによる遺伝子発現変動を調べる。 1)と同様のサンプルを用いて、RNAシークエンス(RNA-seq)によるトランスクリプトーム解析を行う。KOと野生型との比較から、発現変動遺伝子を抽出する。1)および2)のオミックスデータを統合して、各ヒストン修飾間のクロストークによって発現が制御され得る遺伝子群を絞り込み、さらにパスウェイ解析を行い、顕著に濃縮される分子経路を特定する。ここでは、既述したBMP4, WNT3シグナル伝達経路で、あるいはそれらとは異なる分子経路で働く未知のPGC分化運命決定因子を見出だすことを目指す。
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