2018 Fiscal Year Research-status Report
Association analysis between the suppression of interferon responsiveness by HBV infection and changes of gene expression in human hepatocytes
Project/Area Number |
17KK0194
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
柘植 雅貴 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 助教 (50448263)
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Project Period (FY) |
2018 – 2019
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Keywords | B型肝炎ウイルス / ウイルス動態 / ヒト肝細胞 / キメラマウス / 遺伝子発現解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
重度の免疫不全・肝不全を有するマウスにヒト肝細胞を移植し作製されたヒト肝細胞キメラマウス(以下、PXBマウス)は、マウス肝臓が95%以上ヒト肝細胞に置換されており、HBVの持続感染が可能である。一方で、免疫不全マウス由来であることから肝炎は発症しない。そのため、本マウスを利用することで、感染したHBVのマウス生体内の免疫応答を介さない直接的な肝細胞への影響を解析することが可能である。この特徴を利用し、本研究では、HBV感染後の経時的なヒト肝細胞内の遺伝子発現変化の解析を行った。まず、感染するHBVクローンによるウイルス動態の違いを把握するため、30頭のHBV感染PXBマウスのデータから、HBVクローンによるマウス血中HBV DNAの動態変化を解析した。その結果、感染初期のウイルス動態はmultiphasicに変化し、HDV(D型肝炎ウイルス)が共感染した場合でも感染初期の動態には影響しないことを明らかにした(本研究成果は、VirusesにBrief communicationとして報告)。 さらに、これら30頭のマウスのうち、共通のHBVクローンを接種した19頭のマウスとHBVを感染させていない4頭のPXBマウスからヒト肝細胞を採取し、ヒト肝細胞内の遺伝子発現を次世代シークエンサーを用いて解析した。HBV感染3日後、10日後のヒト肝細胞では有意な遺伝子発現変化は観察できなかったが、感染5週後、8週後、34週後のマウスでは多くの遺伝子発現が変化しており、特に、免疫応答に関与するようなpathwayや細胞の増殖やアポトーシスに関与するようなpathwayが活性化されていることが明らかとなった。 現在、この細胞内変化の再現性を確認するため、PXBマウスの肝組織を用いて作製された初代培養ヒト肝細胞(PXB細胞)にHBVを感染させ、経時的な遺伝子発現変化を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画を作成した当初の予定通り、B型肝炎ウイルス感染初期のウイルス動態を解析し、これまでに共同研究先で行われたモデリングのデータと比較した。その結果、ウイルス動態が類似していることが明らかとなり、本研究で使用したマウスのデータが、ウイルス感染初期から慢性期までの様々なphaseで取得されていることが確認できており、予定していたモデリングによるウイルス動態とヒト肝細胞内遺伝子発現の比較が可能であることが示された結果となっており、計画通りと言える。さらに、共同研究先への出向前に始めた次世代シークエンスによるヒト肝細胞内の遺伝子発現解析についても、出向中にデータ取得が終了し、予定通り、データ解析が進んでいる。 一点、次世代シークエンスのデータ解析において、異なった日程で行った2つの解析データを統合して行うに当たり、データのばらつきが大きく異なったため、データ統合にかなりの時間を要した。さらに、データの標準化を行った際の妥当性を評価するために、次世代シークエンス解析と同様のサンプルを用いて、real time PCRによる確認作業が必要になったことから、計画以上の進展を達成することはできなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
B型肝炎ウイルス感染後8週以上経過したヒト肝細胞内では、多数の遺伝子発現が大きく変化することが明らかとなったが、この変化がウイルス蛋白による直接的な影響であるか、もしくは間接的な影響であるかは明らかとなっていない。そのため、まずは、細胞内の免疫応答や発癌メカニズムに寄与すると考えられるPathwayに関連する遺伝子を中心に機能解析を行い、B型肝炎ウイルスと細胞内遺伝子発現との関連をより詳細に検討する予定である。 一方、これまでの研究ではB型肝炎ウイルス感染後早期の遺伝子発現変化については感染細胞数の割合が低いことから十分な解析ができていない。これまでのウイルス動態解析から、ウイルス感染後早期の段階からウイルス蛋白が細胞内で産生され、ウイルス増殖やcccDNA構築に強く関与していることが想定されている。そのため、感染早期の遺伝子発現変化をとらえることは非常に重要と考えられ、マウス肝臓内のヒト肝細胞のうち、B型肝炎ウイルスが感染している細胞のみを抽出し、遺伝子発現解析を行うことも検討する必要がある。共同研究者とのミーティングにおいてsingle cell sortingなどを用いた感染細胞の抽出が提案されており、現在、検討中である。 また、今回のヒト肝細胞キメラマウスを用いた研究の成果に関して再現性を確認する必要があることから、ヒト肝細胞キメラマウスの肝臓から抽出したヒト肝細胞を用いて、in vitroでのB型肝炎ウイルス感染実験を進めており、細胞内のウイルス動態と遺伝子発現を解析し、マウスを用いたデータの再現性を検討していく予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Journal Article] Early Multiphasic HBV Infection Initiation Kinetics Is Not Clone-Specific and Is Not Affected by Hepatitis D Virus (HDV) Infection2019
Author(s)
Tsuge M, Uchida T, Walsh K, Ishida Y, Tateno C, Kumar US, Glenn J, Koh C, Heller T, Uprichard SL, Dahari H, Chayama K
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Journal Title
Viruses
Volume: 11
Pages: 263~263
DOI
Peer Reviewed / Open Access / Int'l Joint Research
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[Journal Article] Comparison of intracellular responses between HBV genotype A and C infection in human hepatocyte chimeric mice2019
Author(s)
Tsushima K, Tsuge M, Hiraga N, Uchida T, Murakami E, Makokha GN, Kurihara M, Nomura M, Hiyama Y, Fujino H, Ono A, Nakahara T, Yamauchi M, Abe-Chayama H, Kawaoka T, Miki D, Imamura M, Aikata H, Hayes CN, Chayama K.
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Journal Title
Journal of Gastroenterology
Volume: 印刷中
Pages: 印刷中
DOI
Peer Reviewed