2021 Fiscal Year Research-status Report
上皮間葉転換におけるGTP代謝シグナルの解明と新たながん治療戦略
Project/Area Number |
17KK0199
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田畑 祥 大阪大学, 蛋白質研究所, 特任講師(常勤) (30708342)
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Project Period (FY) |
2018 – 2022
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Keywords | 上皮間葉転換 / 代謝 |
Outline of Annual Research Achievements |
上皮間葉転換(Epithelial-Mesenchymal Transition: EMT)は、がん転移において重要なプロセスの一つで、上皮細胞(細胞接着能の高い)が間葉系細胞(細胞 接着能が低く、運動能が高い)に変化する現象である。EMTを獲得したがん細胞は極性の喪失、移動・浸潤能が亢進し、がんの転移に大きく貢献する。また、EMT は様々な抗がん剤に対して耐性を付与することから、がん治療の側面からも問題となっている。最近、EMTによる代謝変化が、間葉系形質の維持に重要であることが報告されており、ピリミジン代謝に関与するジヒドロピリミジン脱水素酵素、中心代謝を制御するグルタミナーゼやピルビン酸脱水素酵素キナーゼ4などの 酵素が、EMTの代謝変化を制御することが明らかになっている。しかしながら、EMTの代謝機構は部分的な経路しか解析されておらず、十分に理解されていない。我々は、トランスクリプトームとメタボロームを組み合わせた多層オミックス解析によって、EMTに重要な酵素を同定した。現在、それら酵素のEMTにおける機能について調べている。 これまでの検討で、アミノ酸代謝酵素であるProlyl 4-Hydroxylase Subunit Alpha 3(P4HA3)、Arginase 2(ARG2)、Alanyl Aminopeptidase, Membrane(ANPEP)および、核酸代謝酵素であるcytidine-5'-triphosphate synthetase (CTPS)がEMTの進行に重要なことを見出しており、それらの分子メカニズムについて解析を進めている。2021年度は、P4HA3によるアミノ酸代謝制御とEMTの関係性について論文化を行った。今後はCTPSによる核酸代謝制御とEMTについて解析を進め、論文化を行う予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
前年度の計画に従って、P4HA3強制発現細胞を作製し、EMTを誘導するか検討した。P4HA3ノックダウンはEMTを抑制することから、その強制発現ではEMTを促進することを予想していた。しかしながら、P4HA3強制発現は、EMTを誘導しなかった。 また、癌皮下移植マウスモデルを用いて、P4HA3ノックダウンが腫瘍組織内の代謝を変化させるか検討おこなった。In vivoにおいてもP4HA3がアミノ酸代謝に関与することがわかった。 上記検討を踏まえて、EMTにおけるP4HA3の機能解析については、論文化した。一方で、CTPSの機能解析は、やや遅れており、来年度の課題とする。
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Strategy for Future Research Activity |
EMTに関与する酵素として同定したCTPS遺伝子の機能解析を進める。CTPSがどのような分子メカニズムで、EMTを誘導するか探索する。CTPSはuridine triphosphate (UTP) からcytidine triphosphate (CTP)に変換させる酵素であることから、UTPおよびCTP関連代謝物質がEMTに関与するか検討を行う。 また、近年、がん代謝物質である2-hydroxyglutarete (2-HG)が、EMTを促進することが報告された。我々が検討してきた肺がんのEMTでも2-HGが上昇するか検討を行い、さらにその機能について調べる。
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Research Products
(5 results)