2017 Fiscal Year Research-status Report
A Study on the Mental Foundation and Evolving Legal Norm regarding Hate Speech in Japan
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17KT0005
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
西澤 由隆 同志社大学, 法学部, 教授 (40218152)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
河野 勝 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (70306489)
荒井 紀一郎 首都大学東京, 社会科学研究科, 准教授 (80548157)
中條 美和 津田塾大学, 総合政策研究所, 研究員 (90707910)
村上 剛 立命館大学, 法学部, 准教授 (80737437)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | ヘイトスピーチ / サーベイ実験 / 差別 / 社会的期待迎合 / 同調 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、現代日本のヘイトスピーチ(HS)に関する心的基盤を実証的に明らかにし、そのエヴィデンスをふまえた上で、現行のヘイトスピーチ対策法(「本邦外出身者に対する不当な差別的言動の解消に向けた取組の推進に関する法律」2016年制定)をさらに超える新しい法規範形成の可能性を検討することにある。そして、そのために、本研究では、いかなる条件のもとでどのようなマイノリティに対する差別や言葉の暴力を一般の日本人が許容するのか、またその理由は何か、といったヘイトスピーチに関わる心的メカニズムをサーベイ実験の手法を用いて解明する(経験的分析)と共に、現行法の内容と立法経緯を批判的に検証しつつそれに代わる法規範形成の方向性を探求(規範的考察)することとした。 そして、研究初年度に当たる2017度には、前者について、(i) 先行研究のレヴュー、(ii) プレ実験の批判的検証、(iii)新しい理論仮説の構築、そして包括的な(iv) サーベイ実験のデザイン設計と実施という4つのステップを予定した。そして、予定どおり、最終的に、対象者6,000人に対するWeb実験を2018年3月に完了した。これは、2018年度に実施予定の「本調査」に対するプリテストとして実施したものであるが、そのデータを確保したことから、当初の予定はおおむね達成された。一方、後者については、(i)先行研究のレヴュー、(ii) ヘイトスピーチ規制の国際比較、(iii)日本の現行法の批判的検討という3つのステップを予定した。進捗状況に多少の違いをあるものの、期間中、それぞれ鋭意、必要な作業に取り組んだ。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
経験的分析に関しては、日経リサーチに業務委託の上、実験的なWeb調査を実施した。当該調査については、(1)回収サンプルサイズと、(2)質問票の構成の2点において、申請調書作成時の予定より優位な成果を達成することとなった。 まず、回収サンプル数であるが、約6,000人の回答者からデータを得ることとなった。当初は、3,000人程度の調査を予定していたが、次に説明するように、理論的に必要なサブグループ数が当初予定より増えたことに鑑み、そしてその場合に十分な検定力を確保するには、より多くのサンプルを獲得する必要があると判断した。そこで、小規模調査を繰り返すのではく、研究資金を集中的に使用することで、それを達成することになった。 次に、質問票の構成についてであるが、想定される因果関係において、当初予定より綿密な理論的検討をすることができた。その結果として、「HSに対する態度(HS規制強化に対する賛否、従属変数)」と、「誰に対するHSであるのか(HSが向けられる集団についてのプライミング、従属変数)」との関係性において、「規制強化賛否理由(たとえば、「その尊厳を傷つけるから」など、媒介変数)」と「規制強化賛否理由に差をもたらす要因(たとえば、「在日コリアンに対する態度」など、調整変数)」の4者についての包括的なモデルを構築し、それを調査票に組み込むことができた。なお、これら4要因の組み合わせとして対象者を分割することとなり、そのために上記記載のとおりのサンプル数が必要となった。 規範的考察については、概要に記したように、基本的な作業にそれぞれ着手をし、しかるべき検討作業を進めた。そして、その作業を進める中で、さらなる検討が必要であることが判明した。いずれにしもて、上記前者の進捗状況が想定以上であることから、全体としては「おおむね順調」に進展しているものと考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」に記したとおり、理論モデルについてのパイロット調査データを17年度には取得した。18年度前半の課題は、このデータ(以下、「17年度調査」)の綿密な分析である。その際、まずは、ここで想定しているモデルの妥当性を検証する。より具体的には、「HSの対象者が誰であるかによって、HSに対する規制強化への賛否が変わる」との仮説などが妥当であるかを確認することになる。また、17年度調査では、「ヘイトスピーチ」に対する一般人の認識を探索的に調べる質問群が含まれている。これに関する分析も、鋭意、現在、進行中である。そして、それらの分析を受けて、当該年度の後半には、申請調書に記載のとおり本格的なWeb実験を実施する予定である。 規範的考察も、併せて継続する予定。なお、今年度には、このテーマでの研究業績がすでに豊富な金慧が分担者として研究に参加することから、チームとしての検討作業が加速度的に進むものと期待している。とりわけ、(ii) ヘイトスピーチ規制の国際比較と(iii)日本の現行法の批判的検討を進めるのみならず、最終年度に予定の実証的検討と規範的考察の「融合作業」に着手したい。
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Causes of Carryover |
2017年度から約62万円の繰越金が発生しているのは、当該年度における調査委託費につき、請負業者との交渉の上、調査規模を維持(実際には、サンプル数を増や)しつつも、経費を圧縮することができたからである。2018年度には、本格的なWeb調査を予定しており、そのために410万円の経費を計上している。これに当該繰越金を上乗せすることで、1,000名程度のサンプル数の増加が見込め、分析をさらに優位に進めることができると考えている。
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Research Products
(6 results)