2017 Fiscal Year Research-status Report
Direct observation for steric effect in chemical reaction by controlling molecular orientation of reactants
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17KT0008
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
蔡 徳七 大阪大学, 理学研究科, 講師 (20273732)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 反応遷移状態 / 分子の配向制御 / 二次元画像計測システム |
Outline of Annual Research Achievements |
化学反応は反応の始状態から遷移状態を経て生成系へ至る。ここで反応遷移状態における励起化学種の立体構造や内部状態分布は反応速度と生成物の反応分岐に決定的な影響を及ぼす。もし遷移状態における励起化学種の立体構造を制御した研究が可能となれば、生成系へ至るまでの反応速度や反応分岐の発現機構を解明する上で重要な情報を得ることが出来るはずである。本研究では反応に関与する二つの反応物の相対配向状態を選別することで反応の遷移状態における励起化学種の構造を制御し、生成系へ至る反応経路を制御することを目的としている。 平成29年度、我々は分子配向制御法として、直線偏光レーザーを用いた分子のアライメント状態を選別する研究手法を開発した。核スピンを持たないCO分子に206nmの直線偏光レーザーを照射し、励起CO(a)分子を生成する。CO(a←X)は禁制遷移であるが、エネルギー的に近接するCO(A)との摂動により遷移が許容となる。CO(a←X)遷移はレーザー電場ベクトルに対して垂直遷移であるため、レーザーの電場ベクトルに沿った分子軸の回転面を制御することができる。多光子イオン化法と組み合わせた研究により、励起CO(a)分子のアライメントの状態選別に成功したことを示した。更に、六極不均一電場を用いてハロタン(2-ブロモ-2-クロロ-1,1,1-フルオロオロエタン)分子の状態選別を試みた。質量分析計により六極印加電圧に対する分子線強度を計測しシミュレーションを行うことにより分子の状態選別が可能となった。 本研究では励起CO(a)分子とハロタン分子の反応により生成したBrおよびCl原子の散乱分布を分子配向制御した条件下で観測する。生成物は多光子イオン化法により検出し、散乱分布を二次元画像法により決定する。今年度、我々は二次元画像計測システムの構築に向け、その設計を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
我々は励起CO(a)分子のアライメント状態選別に成功した。更にレーザー光を集光することで高密度分子ビームの発生に成功した。更に、ハロタン分子の状態選別は六極電場を用いて成功した。シミュレーションの結果から、六極電場通過後に2kV/cm程度の均一な強電場を印加することで分子の配向状態を空間内に選別できることが示唆された。以上の結果から、今年度我々は、反応に関与する両方の反応物の配向状態選別に成功した。 一方で、本研究では反応生成物であるBr原子およびCl原子を多光子イオン化法により検出する。その際、生成物の散乱分布を二次元画像法により決定する。反応物の配向状態を制御しながら生成物の散乱分布、および反応分岐比の変化を観測することで反応遷移状態における衝突錯合体の幾何構造と生成系へ至る反応経路の関係を明確にする。 今年度は二次元画像システムの設計と製作を計画していた。生成物の散乱分布を光分解能で計測するために生成イオンを安定化パルス電場により加速する電場の導入を計画した。その際、特別仕様の安定化パルス電場電源の導入に5か月の納入期限が必要であった。一方で、本研究は8月からの開始であったため、パルス電場の導入が間に合わず来年度にシステムの構築をすることになった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度前期に、特別仕様の安定化電源を導入し高感度二次元画像検出システムを構築する。まず、検出システムの性能を評価するため、ハロタン分子の光解離の研究を実施する。紫外光レーザーを分子線に照射し、生成したBr原子およびCl原子を多光子イオン化法で検出する。生成物の散乱分を二次元画像システムで観測する。生成物の散乱分布、および反応分岐比から、分子が光を吸収した後、励起状態から複数の生成系へ至るまでの反応経路を求める。 平成30年度には、キラル分子であるハロタン分子のエナンチオマーを用いて同様の光解離実験を進める。分子の配向状態を規定した条件下で光解離実験を実施した場合、鏡像異性体間で異なる散乱分布を与えることが期待できる。平成30年度の前期で二次元画像システムの構築と光解離実験の研究を完成する。 平成30年度後期では励起CO(a)分子とハロタン分子の反応に関する研究を実施する。生成物であるBr原子およびCl原子を前期で導入した二次元画像死して用いて検出する。反応に関与する反応物の相対配向状態を制御しながら、生成物の反応分岐や反応速度、また生成物の散乱分を系統的に観測する。得られた結果をもとに、反応の遷移状態から生成系へ至る反応経路を実験的に求める。
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Causes of Carryover |
二次元画像検出システムの高感度計測のために、本研究では特別仕様の安定化パルス電源を設置することにした。しかし、納期が5か月であったため、平成29年度内の納入が困難となった。パルス電源は平成30年度初旬に納入予定である。
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