2019 Fiscal Year Research-status Report
Direct observation for steric effect in chemical reaction by controlling molecular orientation of reactants
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17KT0008
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
蔡 徳七 大阪大学, 理学研究科, 講師 (20273732)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | 生成物の反応分岐 / 反応遷移状態 / 配向状態選別 / 六極不均一電場 / ハロタン分子 |
Outline of Annual Research Achievements |
化学反応は反応の始状態から遷移状態を経て生成物へと至る。ここで反応遷移状態における励起化学種の構造は生成系へ至るまでの速度や反応分岐を決定づける要因となる。本研究では反応開始時の反応物の相対配向状態を規定した条件下で反応を開始することで遷移状態における励起化学種の構造を制御し、生成物の反応分岐と散乱分布を計測から反応分岐の発現機構を解明することを目的としている。 今年度我々は六極不均一電場を用いてハロタン分子の回転状態を選別することに成功し、無配向状態でのハロタン分子の光解離の研究を実施した。234nmにおける光解離研究を実施し、生成物であるBr原子及びCl原子の散乱分布を二次元画像処理法で測定する計測システムを構築することに成功した。新規に開発した装置を用いてそれぞれの散乱分布を測定したところ両者は全く異なる結果を示した。これは両生成物が異なる反応経路を経由していることを明確に示している。計測結果を詳細に解析したところ、Br原子は分子が光吸収した後、直接解離ポテンシャルから生成していることが分かった。一方、Cl原子の散乱分布を解析したところ二つの反応経路が存在することが分かった。一方は解離ポテンシャルから直接解離しており、もう一方は非断熱遷移のポテンシャル局面を経由して生成していると考えられた。 更に、Br原子とCl原子の反応分岐比を求めたところ、その比は1:2であり、主生成物がCl原子生成であることが示された。この結果はハロタン分子の解離吸収スペクトルやハロゲン原子の結合エネルギーから予測される結果とまったく異なるものであった。 現在、詳細な反応分岐機構の解明のため、現在高度な理論計算を進めるとともに分子の配向状態を規定した研究を同時に進めることで完全な反応分岐機構の解明を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
分子の配向状態を選別することにより、競争的に生成する生成物の反応分岐比を制御する目的で研究を開始した。現在まで、ハロタン分子の配向状態の制御に成功した。まず、無秩序配向での光解離の研究を開始し、生成物であるBr原子及びCl原子の散乱分布を求めたところ両者は全く異なる反応経路を経由していることが分かった。同時に両者の反応分岐比を求めたところ、Cl原子がBr原子に比べ約2倍ほど大きいことがわかった。この結果は分子の光吸収スペクトルや結合エネルギーからの予測とまったく異なるという興味深い結果を得た。結果を詳細に調べるため現在、理論計算による研究を進め反応機構の解明を進めている。 同時にハロタン分子の配向状態を選別した光解離の研究も同時に進め分子の配向状態と生成物の反応分岐比の相関を求める研究を進めている。これにより分子の光解離に関する詳細な反応機構を解明することが可能であると考えている。 一方で、本研究では分子ー分子反応での生成物の反応分岐の解明を究極の研究対象としている。現在進めている光解離の研究を完了した後、励起CO分子との反応で生成した生成物の散乱分布や反応分岐機構の解明を逐次進める。
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Strategy for Future Research Activity |
六極不均一電場及び高強度電場によりハロタン分子の配向状態選別に成功している。配向選別後の光解離の研究をすでに進めており今年度の初めに完了する計画である。その後、アライメント状態を選別した励起CO分子の反応を取り上げる。偏光レーザーを用いた分子のアライメント選別に関しては既に成功しており、CO+NOの反応における分子アライメント依存性に関する結果は報告している。今年度はアライメント状態を選別した励起CO分子と配向状態を選別したハロタン分子の反応を取り上げ研究を進める。 反応により生成したBr原子及びCl原子の散乱分布をすでに製作した二次元画像検出システムにより各々独立に計測しその散乱分布を求める。更には信号強度から各々の生成物の反応分岐比を求め、反応物の配向状態を変化させながら計測する。その結果から反応物の相対配向に依存した生成物の反応分岐比を求め、反応における反応分岐の発現機構についての解明を試みる。
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Causes of Carryover |
前年度の研究において、ハロタン分子の光解離を調べたところ生成物としたBr原子及びCl原子が競争的に生成することを見出した。競争的に生成する生成物のそれぞれの散乱分布を独立に調べたところ、両者は全く異なる分布を示すことが分かった。更に、両者の反応分岐比を求めたところ、C-Cl結合の結合エネルギーはC-Brに比べ大きいにも関わらずCl原子生成が約2倍大きいという興味深い結果を得た。この理由を明確にするため、分子の配向状態を選別した条件下での光解離研究を詳細に進める必要が生じた。同時に、高度なレベルの理論計算が必要となり、その研究を進めている。 一方で、本研究は励起CO分子とハロタン分子の反応生成物の反応分岐の発現機構の解明を目指しており、そのため遂行のため研究期間を1年延長した。そのため次年度への研究費の使用額が生じた。
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