2017 Fiscal Year Research-status Report
Constitutive investigation of self-organized structure in animal group
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17KT0016
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Research Institution | Japan Advanced Institute of Science and Technology |
Principal Investigator |
永井 健 北陸先端科学技術大学院大学, 先端科学技術研究科, 講師 (40518932)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 浩史 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (20512627)
杉 拓磨 滋賀医科大学, 神経難病研究センター, 助教 (70571305)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | アクティブマター / C. elegans / 集団運動 / 自己組織化 |
Outline of Annual Research Achievements |
線虫の一種であるC. elegansの数密度が大きくなると基板上にネットワーク構造ができる。本年度はこのネットワーク構造の外部刺激応答性を調べるために、光刺激応答性を持つC. elegansについての研究を進めた。用いたのは青色の光を浴びると運動ニューロンが刺激される変異株である。光を浴びると後退したり、停止していた個体が動き始める。 光応答性を持つ線虫も、集団で幾つか枝分かれしたバンドル状の構造を作ることを確認した。出来た構造体に青色の光を短時間浴びせると構造は少し形状が変化するが、すぐに元に戻る。照射時間を長くしていくと、元に戻るまでにかかる時間が長くなっていき、ある照射時間より長いときは元の構造には戻らないことがわかった。 次に線虫のネットワーク構造形成を再現できるモデルにおいて、光照射に対応する刺激応答性を調べた。上述のように光を浴びせると止まっている線虫が動き出すことを考慮し、動く個体数の増加に対する集団運動の応答に注目した。まず、30%の個体の運動を止めシミュレーションすると、ネットワーク構造ができることがわかった。個体同士の引力が強くなるとこのネットワーク構造が崩壊するのだが、全個体が動いているときと比べると崩壊に必要な引力の強さが大きくなる。つまり、止まっている個体がいると引力による崩壊が起こりにくいことがわかった。 個体数増加の摂動を与えるために、30%の個体を止めてネットワークを形成させた後、一定時間全個体を動かし、再び30%の個体を止めた。全個体を動かす時間を変化させ、時間が短いときは元とほぼ同じ構造に戻るが、時間が長くなると一度ネットワークが壊れた後に別のネットワーク構造になるという、線虫と同様の応答を示すことを見出した。そのため、動いている個体数増加が線虫の集団運動の光応答の主な要因であると結論づけた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画で29年度中に行う予定であったネットワーク形成ができない変異体に関する研究及び力学刺激などの外部刺激に対する応答に関する研究をほとんどすすめることができなかった。 一方で、30年度に行う予定であった光応答性を持つ変異株を用いた外部刺激に対する集団運動の応答に関する研究をすすめることが出来た。モデルの解析も行うことでネットワークの挙動を決める要素を新たに見出すことに成功した。このように光刺激に対する応答に関しては当初の予定よりも研究が進んでいる。 また、数理モデルと線虫の動的ネットワークの解析を進め、渦サイズ分布を詳細に比較した。両分布のコルモゴロフ-スミルノフ検定の結果、同じ形のサイズ分布を持つことがわかった。このように、動的ネットワークをより詳細に特徴づけることに成功した。 これらを総合すると、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は29年度に予定していたものの進展していない研究を優先して進めていく予定である。まずは、早急に様々な温度受容ニューロンAFDと力学刺激受容ニューロンFLPに活性のない変異株を手配する。入手次第、高密度条件下で培養してネットワークを形成させ、ネットワーク形成能がない変異体を同定する。 また、上記の研究と並行して力学刺激応答性に関する研究も進めていく。研究分担者である杉はすでに個体レベルの線虫の力学刺激応答性に関する研究を行っている。この研究の装置を応用すれば、集団運動の力学応答性を調べることができる。 また、当初から30年度に行う予定であった動的ネットワーク内の個々の線虫の挙動の解析も進めていく。ネットワーク内の一本のバンドルを拡大して個体の運動を観察することには既に成功している。撮影装置を改善して、広い領域を撮影しながら個体の運動観察を試みる。数理モデルの動的ネットワークに関しても個々の粒子挙動の解析を進め、数理モデルと実験結果の比較からネットワーク形成過程の理解を深める。比較の結果、異なる点についてはその原因を考察し、モデルを修正する。
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Causes of Carryover |
研究代表者は実験技術員を雇い研究を進めていく予定であったが、人選に予定外に時間がかかった。そのため、技術員を含めた研究体制が整ったのが年度の終盤であり、技術員の人件費として計上した予算の一部が使われなかった。29年度に使われなかった人件費は技術員を当初30年度に予定していたよりも長時間雇うために用いる。 研究分担者(伊藤)は29年度は主にフランスで研究を行っていたため29年度に購入予定の備品を30年度に購入することに変更した。そのため、次年度使用額が生じた。 研究分担者(杉)が29年度に行った研究はこれまでの研究に用いてきた設備の流用により実行できた。29年度未使用分は当初29年度に行う予定であったが進められなかった研究に必要な備品購入に用いる。
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Research Products
(3 results)