2019 Fiscal Year Research-status Report
局所的なホルモン応答操作技術の創成による環境適応型植物成長システムの構成的理解
Project/Area Number |
17KT0017
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
打田 直行 名古屋大学, トランスフォーマティブ生命分子研究所, 特任准教授 (40467692)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | オーキシン / 受容体 |
Outline of Annual Research Achievements |
芽生えた場所の環境に適応して生育する植物は、体の各所での局所的応答を個体全体の生長へ反映させるシステムを持つ。しかし、その局所応答を全身統御へつなげる構成的システムの理解は不足している。本研究では、多様な局所応答の起点の1つである低分子ホルモンのオーキシンに着目し、局所的オーキシン応答を操作する技術を創成して、局所的シグナル発信が植物個体の統御につながる様子を解析し理解する。そのために、人工化合物とそれのみを受容する改変型オーキシン受容体(変異体)から成る人工ペアを創成し、オーキシン応答の自在操作を行えるようになった。そこで、この改変受容体を様々な部位特異的プロモーターで発現させ人工化合物を局所投与することでオーキシン応答を自在操作することを目指し、この改変受容体を様々な細胞種に特異的なプロモーターで発現させた植物を作成した。これらの植物に対し、上述の人工化合物を添加し、その結果として植物体に生じた変化を解析したところ、過去にオーキシンとの関連が報告されたことのない生理応答が誘導される状況が複数のケースで見られた。従来のオーキシン添加実験では、オーキシン添加によって身体中の実に多様な細胞が一度に応答を起こすために、単独の細胞腫におけるオーキシン応答だけを抽出できなかったために見落とされてきた制御が多かったと想定できるが、本ツールは狙った細胞腫でのオーキシン応答だけを特異的に活性化できるため、これまでは見えていなかった新規の生理応答が見えてきたものと考えている。ただし、未報告のオーキシン反応を行う興味深い細胞群を発見したとはいえ、今回用いたプロモーターで分類できる以上にさらに細かい複数の細胞種に分類でき得る可能性も判明した。すなわち、これらのさらに細かい細胞種ごとにオーキシン応答を活性化できる植物を作成し解析を行う必要性も生じた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は、創成した人工ペアを用いてオーキシン応答を局所的に操作するために、様々な細胞種特異的なプロモーターで改変受容体を発現させた各々の植物に対する人工化合物の添加実験を実施したところ、オーキシンとの関連が過去に見られたことのない生理応答が影響を受ける例を複数のケースで見つけることができた。これをきっかけにすることで、今後は独創的な研究が展開できることが期待される。以上のことから、現在までの進捗状況としては、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度に見えてきた、オーキシンが関わる過去に報告のない複数の生理応答に関しては、それぞれの現象をさらに詳細に解析する。また、今年度に用いたプロモーターの特異性以上にさらに細かい細胞種に分類して解析すべきことが見えてきたケースに関しては、その目的に資する新たなプロモーターで改変受容体を発現する植物体を作成し、その植物体を人工化合物で刺激した際に引き起こされる現象を観察することで、着目する生理応答を引き起こす鍵となる細胞種をさらに絞り込む。
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Causes of Carryover |
新たに作成する植物の解析を次年度に行うことになったため。
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Research Products
(3 results)