2019 Fiscal Year Research-status Report
Challenges for constitutive analysis of the mechanism of spiculous skeleton construction
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17KT0019
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船山 典子 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30276175)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2022-03-31
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Keywords | 骨片 / カイメン動物 / 骨片運搬 |
Outline of Annual Research Achievements |
芽球骨片運搬を制御する分子機構解明に関して、トランスクリプトームのデータの解析を進めることが出来た。昨年度(2018年度)は、直径約400マイクロメートルの形成中の芽球から、Sample A(芽球骨片運搬細胞複合体が誘引されていると考えられる部分の芽球上皮細胞+芽球骨片運搬細胞複合体+技術的に混入してしまう周囲の様々な細胞種)と、Sample NA(芽球骨片運搬細胞複合体を誘引していないと考えられる部分の芽球上皮+技術的に混入してしまう周囲の様々な細胞種)を調整、次世代シークエンサーにより150 bのリードを得ていた。2019年度は当研究室でこれまで得られた次世代シーエンスによるデータ、すでに発表しているデータ(Alie et al. 2015)を用い、新たにカワカイメンmRNAのリファレンス配列を作成、これにSample A、Sample NAの配列を当て、発現量の解析を行い、トップ100の中の約50%にアノテーションが出来、その中には分泌タンパク質、リセプター型タンパク質をコードしていると考えられ、芽球骨片運搬の誘引に関与している可能性のある遺伝子候補を得た、即ち、分子機構解析への足がかりを得ることに成功した。また、カワカイメンと形態の異なるヌマカイメンの幼弱個体を2ヶ月弱ほど飼育することに成功、個体数が多くなく個体ごとのバリエーションが大きいため、結論出来るまでには至っていないが、カワカイメン幼弱個体の成長と異なると考えられる点を複数見出すことが出来、形態の違いを生み出す機構を考えるヒントを得ることが出来た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
芽球骨片運搬に関しては、シークエンスのリードの解析から、先述の様にSample AとSample NA間で発現量にSample Aで発現が高く、有意にSampl Bと発現量に差があると示された遺伝子トップ100に関して、アノテーション、ドメイン構造解析、膜貫通ドメイン解析などを行った。約50%は既知の遺伝子と相同性がなく(カワ)カイメン独自の遺伝子である可能性が示唆されたが、約50%は既知の遺伝子との相同性があり、中には分泌性タンパク質、リセプター型タンパク質の遺伝子があった。これらの遺伝子は、芽球骨片運搬を誘引している候補細胞である芽球上皮細胞、または芽球骨片運搬細胞複合体を形成する、2種類の細胞種で特異的に発現している可能性、即ち、芽球骨片運搬細胞複合体を特定の部位の芽球上皮へ誘導する、または芽球骨片運搬細胞複合体の細胞同士での相互作用などに関与している可能性が期待出来る。 一方、同じ形状の骨片を用いて異なる形態を生み出す仕組みへの取り組みでは、ヌマカイメン約50芽球から形成させた幼若個体を、2ヶ月弱飼育することに成功した。餌の量が過剰だと沈殿した餌によりおそらくは水管系が詰詰まるなどで個体が弱り死に至ことがあり、一方餌の量が不足すると体が退縮する等、幼弱個体の飼育が予想以上に困難であり、充分な個体数の観察が出来ず、プレリミナリーな結果ではあるが、①ヌマカイメン幼弱個体は、カワカイメン幼若個体よりも体の一部が基質に新たに接着し伸展、他方は退縮し、個体全体としては位置が変化(体の移動)する傾向が強い、②餌の沈殿などで基質への接着がしにくく体の位置が移動出来ない状況で、体が成長出来る際にZ方向への伸長が起きるのではないか。③その際、ただ細胞が附加されるのではなく、ダイナミックな細胞移動があるの可能性があるという興味深い知見を得ることが出来た。
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Strategy for Future Research Activity |
新コロナウイルス感染拡大防止策のため、実験を行うことが困難な状況が続く可能性が高いため、まずはin silicoで行える解析を進める。具体的には、DEGsとして得られた遺伝子群の内、約半数の既知の遺伝子と相同性のなかった遺伝子群について、より詳細にドメイン解析、プロセッシングを受けて特定の分泌ペプチドとなる可能性を期待して繰り返し配列の有無の解析などを行い、リガンド、レセプターの可能性のある遺伝子を選び出す。また、トップ200-101に関しても、トップ100と同様の解析を行う。実験が出来る状況になれば、トップ100のDEGsについて、Whole-mount in situ hybridizationを行い、これらの遺伝子を発現する細胞種、芽球上皮細胞であればその位置などから、芽球骨片運搬に関与する遺伝子を特定する。平行して、芽球形成時の芽球上皮細胞への遺伝子導入法を工夫、将来的に分泌分子(誘引因子候補)を遺伝子導入により特定の位置で発現させ、芽球骨片運搬細胞複合体の挙動を操作するなど、誘引因子の機能の証明と解析を可能にする実験系の確立を目指す。
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Causes of Carryover |
ヌマカイメン幼若個体に餌を与えながらの長期培養法の確立は餌の量とタイミングが難しく、また個体ごとのバリエーションが大きいため、充分な観察を行い特徴を抽出するためには、実験をさらに行い観察個体数を増やす必要がある。また、人手不足からアルバイト学生を雇用、解析の基礎を習得してもらい、解析を行ったため、得られたmRNAを用いたトランスクリプトームの配列決定および解析に当初の計画以上に時間を要しているため。
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Research Products
(4 results)