2020 Fiscal Year Research-status Report
Challenges for constitutive analysis of the mechanism of spiculous skeleton construction
Project/Area Number |
17KT0019
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
船山 典子 京都大学, 理学研究科, 准教授 (30276175)
|
Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2022-03-31
|
Keywords | カワカイメン / 骨片 / 骨片運搬 / 芽球形成 / 芽球骨片 |
Outline of Annual Research Achievements |
新コロナウイルス感染拡大防止策のため、実験を行うことが困難な状況であったため、in silicoで行える解析を進めた。具体的には、芽球形成過程において、2019年度のおおまかな解析により、芽球形成におけるDifferentially expressed genes (DEGs)を得ていたが、さらに解析を重ね、より信頼度の高いDEGsを得、上位100遺伝子につき、アノテーションを行った。約半数では、既知の遺伝子と相同性のなかったため、より詳細にドメイン解析、プロセッシングを受けて特定の分泌ペプチドを複数生み出す可能性を期待して繰り返し配列の有無の解析を行った。さらに膜貫通領域の解析を行い、レセプターである可能性のある遺伝子を選びだした。芽球コートの主成分はコラーゲンであるが、DEGsの中には、期待通り複数のコラーゲン分子が含まれていた。今後、Whole-mount in situ hybridization (WISH)によるmRNA発現解析を行う為には、RT-PCRによる遺伝子クローニングが必須である。クローニングの準備として、DEGsのうち15ほどの遺伝子に関し、プライマーを設計し購入した。 一方、ヌマカイメンは以下の理由から解析が非常に困難であると分かった。1)2度の冷蔵庫内でも1月末になると一斉に個体形成を開始してしまう。2)各種方法を試みたが、冷凍保存には成功しなかった。この問題解決のために、淡水カイメンの分類に詳しい益田芳樹博士に相談、マクロな突起を形成する別種の淡水カイメン、アナンデールカイメンの利用を助言いただいた。芽球で少なくとも一年保存出来るか、シーズンを問わず芽球からの個体形成を行わせられるか、その効率はどれほどかといったアナンデールカイメンを実験系に用いることが出来るかの検討を開始した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度に一応のDEGsは得ていたが解析手法をさらに向上させ、バイオインフォマティクスとしてより信頼性の高いDEGsを抽出した。上位100遺伝子のうち、約半数が既知の遺伝子と相同性がなかったため、膜貫通領域の有無と位置(分泌タンパク質や、膜貫通型レセプターの可能性を考慮)の解析、プロセッシングを受け複数の似た配列の分泌タンパク質を生ずる遺伝子(リガンドとなる可能性を考慮)である可能性を期待して似たアミノ酸の繰り返し配列ではないかの解析などを行ったが、特にポジティブな結果を得る事が出来ていない。このため、既知の遺伝子と相同性がありアノテーション出来た遺伝子群から上位15遺伝子ほどを選び、RT-PCRによるcDNAクローニングのためのプライマー設計までの準備を行った。また、約2週間かけて培養・芽球形成誘導を行い、同調的な芽球形成を行わせ、各段階の形成中芽球を含む個体からRNA抽出を行った。 一方、マクロな突起構造を形成する淡水カイメンの種としてアナンデールカイメンに着目、以前アナンデールカイメンを採集したことのある場所を益田芳樹博士に紹介いただいた。その際は1個体しか見つけることが出来なかたが、気温が下がり個体は退縮し芽球を形成しているだろうと期待出来る時期に芽球採集を試み、非常に扁平に退縮し岩についている直径約2-3センチの個体を見出すことが出来、10余りを採集、骨片標本によりアナンデールカイメンであると確認した。この種は冬(低温)を越えないと芽球からの個体形成を開始しないと言われているため、芽球は4℃で保存した。種によっては春のみ個体形成を行わないと知られているため、芽球を4℃で少なくとも一年以上保存出来、また通年シーズンを問わず、個体形成を行わせ得るか確認することが今後の課題である。
|
Strategy for Future Research Activity |
形成中の芽球を含む個体から抽出したRNAを用い、RT_PCRによりDEGsのcDNAクローニング及び塩基配列決定を行う。さらに、形成中の芽球を含む個体を用いたWhole-mount in situ hybridizationによるmRNA発現解析を行い、着目した遺伝子が、何時どこでどの細胞種で発現しているかを明らかにすることで、芽球骨片運搬及び配置における細胞・分子機能の解析を進める。一方、アナンデールカイメンに関しては、芽球からの個体形成を季節ごとに行わせ、個体形成効率、形成された個体の様子を記述し、通年個体形成を行わせ得るのか確認する。また、芽球から個体形成させた幼弱個体をカワカイメンと比較、形成された骨格の顕著な違いの有無、違いがあれば、骨片形成過程をカワカイメンと同様、骨片ライブイメージングにより解析、骨片形成過程のどの過程の違いが、形成された骨格の違い、さらにはマクロ形態の違いを生み出すのかを解析する。
|
Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染拡大防止のため、またその対応の学務のために、また物品の欠品などもあって、研究遂行に大きな制限が生じ、当初の計画通りに研究を進めることが出来なかったため。また、解析を試みよる予定であったヌマカイメンの個体形成開始のコントロールが予想外に難しく断念せざるを得ず、さらに別種の淡水棲カイメンを研究対象とする検討を開始したため。
|