2019 Fiscal Year Research-status Report
1細胞遺伝子発現・力学動態の統合アプローチによる1個体発生原理の構成的理解
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17KT0021
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
近藤 武史 京都大学, 生命科学研究科, 特定助教 (60565084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥田 覚 金沢大学, ナノ生命科学研究所, 准教授 (80707836)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | 上皮形態形成 / ショウジョウバエ / 1細胞RNA-seq / 応力推定 / イメージング |
Outline of Annual Research Achievements |
これまでにショウジョウバエ胚から単離した細胞とFluidigm社C1ハイスループットチップ、次世代シークエンサーを用いた1細胞RNA RNA-seqにより1,237細胞分のデータを取得していた。さらに既知の空間発現情報を用いることで、各細胞の胚における空間位置情報を最大1細胞列単位の精度で割り当てることに成功していた。R1年度にはこのデータ解析をさらに進め、細胞間で発現の差異が大きい遺伝子を解析したところ、転写因子をコードする遺伝子に加えて、細胞膜や細胞外領域に関連する遺伝子(細胞膜関連遺伝子)が濃縮されていることを見出した。次に、遺伝子を機能や細胞内での局在でグループ化し、各胚領域における遺伝子発現状態の特徴づけへの各グループの寄与を調べたところ、転写因子もしくは細胞膜関連遺伝子の発現状態の差異によって胚領域および細胞列の分類が可能であることが明らかになった。また、先端ゲノム支援のサポートも受けながら、より多くの細胞の1細胞RNA-seqデータを取得するとともに、形態形成に異常を示す変異胚を対象とした1細胞RNA-seqデータの取得を行った。さらに、既存の1細胞レベルのin situハイブリダイゼーションによる定量的な空間発現データと1細胞RNA-seqデータを統合し、胚の各細胞のゲノムワイドな遺伝子発現パターンを推定する数理手法を新たに開発した。 また、ライブイメージングにより抽出した胚全体の画像データから1細胞レベルの三次元形態・応力場の変化を予測するため、昨年度開発したシミュレーション手法の初期条件として、ライブイメージングにより抽出した細胞形状データを導入する数理的枠組みを導入した。また、構築したシミュレーション手法を用いて、単層上皮組織の力学解析を行い、内在する力学不安定性を明らかにした(Biophys J, 2020)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
1細胞遺伝子発現データの解析も予定通り進んでおり、ショウジョウバエ原腸陥入期における細胞レベルのトランスクリプトーム多様性に寄与する遺伝子群の特徴を明らかにした。また、ゲノムワイドな遺伝子発現パターンを推定するための数理解析手法も開発できている。さらに、実験データに基づくシミュレーション手法の基礎構築を進めた。細胞の力学情報を取得するための画像データの取得が遅れているが、基本的な手法はすでに確立できており、野生型胚および変異胚の画像データを蓄積すると同時に細胞形態・力学情報に関する定量データの取得と推定を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに開発した細胞動態に関する数理的解析手法により、実験データから取得した細胞形状データをシミュレーションの初期条件として導入することができるようになった。しかし、実験データから抽出した三次元の細胞形状データには大きなノイズとエラーが含まれており、実際の組織内における細胞の形状や配位を再現できていない。今後は、野生型胚および変異胚について細胞形状を解析するための画像データを蓄積すると同時に実験データから細胞形状や配位をより高精度に抽出し、実データベースの定量的なシミュレーションの実現に取り組む。また、空間情報を基準としてこれまでに取得してきた1細胞遺伝子発現情報と細胞応力情報の統合データを構築し、多変量相関解析により両者の関係性を見出す。
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Causes of Carryover |
イメージングによる画像データの取得が遅れていることが主な要因であり、イメージング解析の遂行およびデータ解析、追加の遺伝子発現解析のための消耗品や試薬の購入と成果発表のために使用する。
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