2017 Fiscal Year Research-status Report
社会的境界研究の構築と移民トランスナショナリズムへの応用
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17KT0030
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
樽本 英樹 北海道大学, 文学研究科, 教授 (50271705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 千香子 一橋大学, 大学院法学研究科, 准教授 (10410755)
人見 泰弘 名古屋学院大学, 国際文化学部, 准教授 (10584352)
南川 文里 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (60398427)
秦泉寺 友紀 和洋女子大学, その他部局等, 准教授 (60512192)
佐藤 成基 法政大学, 社会学部, 教授 (90292466)
本田 量久 東海大学, 観光学部, 准教授 (90409540)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 境界研究 / トランスナショナリズム / 国際移民 |
Outline of Annual Research Achievements |
電子メールを利用した議論および研究会における研究発表と議論を通じて、各研究分担者の観点からどのような現象が境界研究の対象になりうるのかを探索していった。 アメリカ合衆国においてはトランプ大統領が就任してにわかに排外主義的な緊張が生じているように見えるけれども、 その源泉は一九世紀前半のカトリック移民に反対する人々によるネイティヴィズムであり、その後1980年代90年代には「シヴィック・ネイティヴィズム」 へと変化し、21世紀になると安全保障と治安維持の様相を帯びるようになった。日本において境界研究の対象となりうる現象としてインバウンド観光が挙げられる。たとえば新潟県糸魚川市に外国人観光客が訪れる理由は、スイス出身の個人がキーパーソンとなって外国人の来訪を促進したことが大きい。ドイツにおいては移民・難民の流入が急増していくなか知識人や政治家などがイスラム嫌悪的な「イスラム批判」を展開し、ムスリムとそれ以外の境界を構築しようとしている。フランスでは、「フランス文化とは合わない文化を持っている」いった文化的理由で差別を行う人種主義が現れ、人種間の境界を構築するために文化が持ち出されている。イタリアでは、反移民排外主義やイスラム嫌悪が急速に広がる中で、イタリア北部の自治拡大を要求する地域政党として誕生した北部同盟が人気を獲得し、非合法移民やムスリム移民とマジョリティとの境界を構築しようとしている。ミャンマーに関しては、日本で難民認定を受け正常回復後母国に帰国した人々がビジネスなどで日本とミャンマーの境界を越えている事例が報告された。 いずれの事例も境界研究が有効性を発揮する可能性に富むトランスナショナルな事例である。しかし計画時点では初期段階で行う予定であった理論研究は後回しになってしまった。今後は理論研究を進めながら、以上の実証的研究に結びつける努力をしなくてはならない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では先に行うことにしていた社会的境界に関する理論研究は来年度以降に行うことになった。「境界」に相当する具体的な現象を確定する必要が出てきたためである。しかし各研究分担者が得意とする国・地域の状況を報告し議論していく過程で境界研究が扱うべき各国の具体的な現象が明らかになった。このため、結果として当研究は順調に進展することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の計画とは若干異なり具体的現象の確認から研究が始まったため、今後は理論研究を進め、理論と実証との関係づけを進めつつ、実証自体に関しても理論を踏まえたさらなる分析を進めていくことにする。したがって、平成30年度の特に前半には理論研究を進展させることが必要となっており、研究分担者と協働しつつ遂行していくことになる。
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Causes of Carryover |
今年度は研究代表者および研究分担者がすでに研究してきた事例をもちより境界研究の「境界」に当たる現象にはどのようなものがあるのかを探索することに集中したため、海外調査や国内・国際学会研究報告が計画よりも少なくなったことによる。次年度は、実証研究だけでなく理論研究を推進するためにも海外調査を遂行し、加えて得られた知見を国内・国際学会において発表することで次年度使用額を使用することにしたい。発表が確定している学会としては、4年に1度開かれる国際社会学会大会が2018年7月カナダ・トロントで行われ、法社会学国際大会が2018年9月にポルトガル・リズボンで開かれ、同月に神戸で日本社会学会が行われる。これらの学会大会における研究発表および研究討論を通じて、境界研究の理論的側面を発展させていくことにしたい。
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Research Products
(33 results)