2020 Fiscal Year Research-status Report
社会的境界研究の構築と移民トランスナショナリズムへの応用
Project/Area Number |
17KT0030
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
樽本 英樹 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (50271705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 千香子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (10410755)
人見 泰弘 名古屋学院大学, 国際文化学部, 准教授 (10584352)
南川 文里 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (60398427)
秦泉寺 友紀 和洋女子大学, 人文学部, 准教授 (60512192)
佐藤 成基 法政大学, 社会学部, 教授 (90292466)
本田 量久 東海大学, 観光学部, 教授 (90409540)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2022-03-31
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Keywords | 社会的境界 / 国際移民 / 国際比較 |
Outline of Annual Research Achievements |
コロナ禍で海外調査研究が遂行できないため、既存の文献を用いてできる範囲で社会的境界に関する理論を具体的に事例に実証する試みを行った。ドイツ、フランス、アメリカ合衆国、日本、ミャンマーにおいても近年の動きを追った一方、英国は以下のように実証を行うことができた。 2016年6月23日の国民投票によって、英国がヨーロッパ連合 (EU) から離脱することが既定路線となった。なぜ英国はEU離脱へと向かうことになったのか。この問題を、移民受け入れを考慮しつつ社会的境界の視角からEアプローチした。EU離脱を考察する糸口として、2つの仮説を取りあげた。 ひとつめは、EU離脱は英国の「自分さがし」過程の結果だという「自分さがし」仮説は、入国管理・市民権制度改革から見てEU離脱は「英国人なるもの」の模索の結果だとする。中でも最も問題化したのはEU域内の東欧諸国からの単純労働移民である。すなわち、主要な社会的境界の一つは、英国市民・新英連邦移民と東欧諸国移民との間に設定されている。 もうひとつの、英国を構成するイングランドのナショナリズムが現れた結果だという仮説は、イングランドのナショナリズムがヨーロッパ懐疑主義や英語圏 (Anglosphere) 主義と結合し、EU離脱をもたらしたという。ところが、イングランドとそれ以外という境界設定はEU離脱の説明には十分ではない。離脱賛成はは、イングランドの境界と適合しないのである。特に、EU離脱に賛成した旧植民地移民は、比較的新規の東欧移民と自分たちとの間に境界を設定している。 英国のEU離脱は、上記のような複数の社会的境界が活性したことに着目しないと理解できないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため既存文献のみを参照することで、社会的境界の理論を英国のEU離脱を理解するために活用することができた。これで社会的境界理論を応用する道筋をつけることができたと判断できるものの、海外調査研究を実施することできないため各国における近年の動きを把握できていない。この点を今後どのように解決するかが課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2021年度中にコロナ禍が収まることは難しい見通しとなった。そこで、海外調査研究を実施することなく研究結果をまとめる方向に舵を切る必要を切に感じている。具体的には、コロナ禍以前の調査結果と既存文献による情報を組み合わせつつ、社会的境界理論を各国のケースに応用し、近年の国際移民に関わる統合と分断の対立を明らかにできないか試行錯誤しようと思う。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため、海外調査研究を実施できなくなってしまったことによる。次年度においてもしコロナ禍が収まれば海外調査を実施するし、もし収まらなければそれに代わる方策、たとえな文献データの入手などによって使用する心づもりである。
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