2021 Fiscal Year Research-status Report
社会的境界研究の構築と移民トランスナショナリズムへの応用
Project/Area Number |
17KT0030
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
樽本 英樹 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (50271705)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
森 千香子 一橋大学, 大学院社会学研究科, 准教授 (10410755)
人見 泰弘 名古屋学院大学, 国際文化学部, 准教授 (10584352)
南川 文里 立命館大学, 国際関係学部, 教授 (60398427)
秦泉寺 友紀 和洋女子大学, 人文学部, 准教授 (60512192)
佐藤 成基 法政大学, 社会学部, 教授 (90292466)
本田 量久 東海大学, 観光学部, 教授 (90409540)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2023-03-31
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Keywords | 社会的境界 / 国際移民 / 比較社会学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、新型コロナパンデミックがいまだ終息を見せないため、主に初学者向け書籍の執筆に注力することで、社会的境界研究を推進しようと尽力した。日本および韓国は外国人の排除と包摂が主に問題になっている一方、後者は多文化社会への移行をより鮮明にしていた。中国は、比較的に近年、移民送り出し国から受け入れ国へと移行し、これから外国人の統合が問題化する段階である。また、東南アジアの諸国は、送り出し国としての性格と課題をより強く抱えていた。 移民文化による社会境界形成を極力避けようとする多文化主義的な政策は、カナダやアメリカ合衆国で色濃く見られる。また、南半球のオーストラリアやニュージーランドでも採用されている。しかし、どの社会的境界をより低くするかについては、各国で差異があった。 ヨーロッパの国々については、国民国家としての政治的境界と社会的境界の不一致に悩む姿が露わになった。イギリスは、「帝国」を解体した後、超多様性の出現に格闘している。フランスは、「人権宣言の国」にもかかわらず、その内実を裏切る状況が出現している。ドイツでは、極右ポピュリズムの台頭など、国民国家の境界をめぐる対立が生じている。イタリアでも、「イタリア人」の境界が揺らぎ、いまだ収拾がついていない。それらを取り巻くヨーロッパ連合 (EU) は、統合を進めながらも、内部に分断を抱えている。 先進諸国の外部に目を向けると、ロシアと旧ソ連諸国では、国家の崩壊が大量の人の移動をもたらし、重い副作用を被っている。ブラジルは、政治経済危機に苦慮しながら、草の根のトランスナショナルな移民によって支えられている。アラブ首長国連邦を見ると、「国民」と「移民」の間に強固な社会的境界が構築されていることがわかった。 以上、世界各国をできるだけ網羅的に把握することをめざした結果、社会境界に関するイシューの多様性が浮かび上がった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナパンデミックの影響で海外調査研究ができない状態が続いている。そのため既存の文献やデータを参照することで、社会的境界研究を推進しようとした。特に、初学者向けの書籍の執筆を通して、その推進を遂行しようとした。その結果、社会的境界研究の全体像をおおむね描くことができたと判断できるものの、海外調査研究を実施することでしか知り得ない各国における近年の動きを把握できていない。昨年度、一昨年度と引き続き、この点をどのように突破し解決するかが課題となっている。
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Strategy for Future Research Activity |
2022年度中に新型コロナパンデミックが収まるかどうかについては、予断を許さないけれども、まずは海外調査研究の可能性を模索し、同時に、海外調査研究を実施することなく研究結果をまとめる方向に舵を切る方策を練るつもりである。具体的には、パンデミック以前の調査結果と既存の文献やデータによる情報を組み合わせつつ、各国における社会的境界の出現と衰退に応用することを模索する。そして、近年における国際移民に関わる統合と分断の対立の動態が明らかになれば、本課題の目的を達成できると考えている。
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Causes of Carryover |
2021年度においても新型コロナパンデミックが終息を見せず、海外調査および海外における国際学会・研究会議における研究発表ができなかったため、予算を次年度に繰り越すことになった。
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Research Products
(10 results)