2017 Fiscal Year Research-status Report
生活習慣病におけるマクロファージの時空間多様性をもたらす作動原理の解明と医療応用
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17KT0047
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
眞鍋 一郎 千葉大学, 大学院医学研究院, 教授 (70359628)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | マクロファージ / 生活習慣病 / エピジェネティクス |
Outline of Annual Research Achievements |
マクロファージは極めて多彩な機能を発揮する。生活習慣病と癌の基盤病態である慢性炎症では、その開始から遷延化、組織機能障害と組織リモデリングまで、すべてのプロセスで主要なエフェクター細胞として働く。一方でマクロファージは炎症の収束や組織修復にも働き、また常に組織恒常性を維持する機能も持つ。そのため、老化や病態に伴うマクロファージの機能変化は、組織恒常性やストレスへの応答を変調させ、組織機能障害をもたらすことが想定される。本研究では、マクロファージの内因的な機序(発生学的由来、老化による変化)と外因的な要因との複雑な交互作用によって決まるマクロファージ機能の多様性の制御機序を明らかにすることを目的とする。マクロファージの由来は加齢や病態によって変動し、また、微小環境も変わる。特にマクロファージは、本質的にその置かれる環境の変化にダイナミックに応答して多彩な役割を果たすことから、時空間と病態といった多様な軸から解析することが、その作動原理(制御プログラム)を解明するために必須である。この点から本研究では、時間(年齢)、空間(複数組織)、組織の状態(定常状態と疾患)を横断的に解析する。脳、心臓、腎臓、脂肪組織、肝臓の組織マクロファージならびに骨髄由来マクロファージ、胎児肝臓由来マクロファージについて、定常状態、老化、肥満、心負荷といった状態で、ゲノムワイド解析を行った。RNA-seqによるトランスクリプトーム解析、ChIP-seqやATAC-seqによるエピゲノム解析を行った。これらの解析結果から、各組織マクロファージに固有なオープンクロマチン領域を同定するとともに、その差異をもたらすシスエレメントの解析を進めた。また、ex vivoの解析により、微小環境シグナルの同定を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ATAC-seqによるオープンクロマチン領域のゲノムワイド解析法を確立し、多様なマクロファージのオープンクロマチンの変化を解析した。これらの解析により、時空間的なエピゲノムの相違を同定した。
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Strategy for Future Research Activity |
マクロファージの時空間・疾患エピゲノムの解析を引き続き進める。心不全モデルや加齢マウスにおける解析を追加し、マクロファージエピゲノムの時空間・ストレスの多様な軸での変化を明らかにする。特に各軸での固有な変化をバイオインフォマティクス解析で同定する。微小環境に応じたエピジェネティック制御機構の解析を進め、各組織マクロファージの炎症や代謝変化、老化に共通した機序と、各組織で固有の機序とを明らかにする。加齢に伴う内在的なエピゲノム変化の影響を検証するため、若年と老化マウスの骨髄を若年・老化マウスに移植し、各組織マクロファージのエピゲノムを解析する。肥満や心不全、老化の微小環境によって変動した組織マクロファージの機能やストレス応答の変調を明らかにするため、疾患モデル、老化モデルの組織マクロファージを単離し、対応する組織への移植を行い、組織機能の変化を解析する。また、骨髄幹細胞レベルでの変化についても移植により検討する。
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