2020 Fiscal Year Annual Research Report
対話合成実験に基づく,話の面白さが生きる「間」の研究
Project/Area Number |
17KT0059
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
定延 利之 京都大学, 文学研究科, 教授 (50235305)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林 良子 神戸大学, 国際文化学研究科, 教授 (20347785)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | 対話 / 間 / 面白さ / 音声 / スピーチアクト / 状況 / コミュニケーション / スキル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、一言でいえば、「間」というものが、単なる空白や休止ではないということを、知覚実験を通して明らかにしたものである。その際に手がかりとしたのは、「話の面白さ」であった。話の面白さは、話の内容だけでなく、話し方によっても大きく変わり得るからである。そして我々は、話の面白さについては、ごくわずかなタイミングのズレについても、敏感な感覚を持ち合わせているからである。以下、得られた知見の中心部を簡潔に述べる。 「間」は、面白い話をされた相手が、「一瞬」おいて笑い出すという推論の過程である。また、話し手の繰り出す面白い話が失敗してスベってしまい、笑うべきタイミングを「一瞬」過ぎた段階で、スベリ笑いと言われる別の形の笑いが生み出される場合、「間」は、「この話は失敗した」という各人の推論結果が会話参加者間で公然化する過程でもある。会話の「間」は、会話参加者がそれを意識するかぎり、余剰な空隙というものではなく、濃密な「察し」または「察し合い」の過程である。 このような「間」は、物理的なポーズ区間というよりも、会話参加者たちの発話速度などに影響される、心理的なものであり、それぞれの社会文化の中で習得されていくものである。日本語社会でも中国語社会でも笑える同じネタを使った発話実験により、日本語母語話者と中国語母語話者(中国語母語話者)で、笑いの「間」の感覚が違っていることが明らかになった。 会話を、会話参加者たちの「コミュニケーション行動」と「状況」に2分しようとする時、「間」は、その両者のいずれにも属するという形で、この2つが重なり合う部分を持ち、二分法が究極的には適切なものではないことを教えてくれる。
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[Book] 発話の権利2020
Author(s)
定延利之(編者)
Total Pages
244
Publisher
ひつじ書房
ISBN
978-4894769830
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