2019 Fiscal Year Research-status Report
Biodiversity conservation based on mutual trust between famers and consumers
Project/Area Number |
17KT0076
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
栗山 浩一 京都大学, 農学研究科, 教授 (50261334)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 禅 東京大学, 大学院農学生命科学研究科(農学部), 准教授 (20462492)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | 環境支払 / 環境保全型農業 / 経済実験 / 信頼 |
Outline of Annual Research Achievements |
農業は,自然の恩恵を受けながら生産活動を行うと同時に,生産活動を通して多様な生物の生息場所を提供することで,生物多様性と密接な関わりをもっている。これまでの環境農業政策では環境支払などの貨幣的支援が中心であったが,環境保全型農業の普及は遅れている。 そこで,本研究では,農家の生物多様性保全に対する「自己宣言」に着目し,農家と消費者の「相互信頼」が形成されるプロセスを経済実験によって明らかにすることで,生物多様性に配慮した農作物の普及を低コストで実現する方法を検討した。 事例研究では,栃木県の「エコ農業とちぎ」を分析した。この制度では,農家は環境保全の実践宣言を行い,消費者は農家に対して応援宣言を行う自己宣言方式が採用されている。認証が不要のため低コストによる保全が可能な反面,農家が宣言するだけで保全に取り組まない恐れがある。だが,農家と消費者が互いに信頼関係を構築することで,認証がないにも関わらず生物多様性保全の取り組みが続いている。 農家と消費者の信頼関係が構築され,自己宣言方式が有効に機能する理由について経済実験を用いて分析した。経済実験では,被験者を環境支払と非貨幣型支援の二つのグループに分けた。環境支払では環境対策に対して補助金が提供される。一方,非貨幣型支援では消費者の応援メッセージのみが提供される。環境支払と非貨幣型支援を比較したところ,環境支払は交付単価によって保全活動の効果が変 化することが示された,一方,非貨幣型支援は政策導入の初期においては 10a あたり 14,404 円の効果を示したが,次第に効果が低下することが分かった。以上のことから農家と消費者の相互信頼に基づく非貨幣的支援制度は,環境保全型農業の普及に向けた初期対策としては有効と考えられるが,長期的に維持するためには環境支払との組み合わせが不可欠と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
事例調査や実験室実験は順調に完了し,学会報告や論文刊行など予定通り研究が進展したが,対象地域の行政担当者の交代によりフィールド実験の実施が遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
国内の農業経済学において経済実験を用いた研究には関心が高まっているが,まだ研究事例が少ない。本研究はその先駆けとなるものであるが,特定の制度に関する分析にすぎない。今後は,様々な地域の農業環境政策を対象に経済実験を用いた研究が必要であろう。
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Causes of Carryover |
期間中に農家を対象とした経済実験を予定していたが,対象地域の行政担当者の交代に伴い,経済実験の再調整が必要となった。このため実験開始時期を延長する必要が生じ,研究計画の見直しが必要となったため。
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Research Products
(5 results)