2017 Fiscal Year Research-status Report
管理放棄による農林地土壌の機能低下と経済的損失の影響評価
Project/Area Number |
17KT0078
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Research Institution | Forest Research and Management Organization |
Principal Investigator |
小林 政広 国立研究開発法人森林研究・整備機構, 森林総合研究所, 主任研究員 等 (50353686)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松森 堅治 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, グループ長 (40414445)
吉川 省子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 農業環境変動研究センター, 主席研究員 (60502937)
志村 もと子 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構, 西日本農業研究センター, 上級研究員 (70502920)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 管理放棄 / 農林地 / 水源涵養機能 / 豪雨 / 窒素飽和 |
Outline of Annual Research Achievements |
窒素の過剰流入により窒素飽和の状態にある森林では、自然状態の健全な森林と比べて渓流水中の硝酸態窒素が高濃度になることが知られている。中山間地の森林には農業生産のために流域内に負荷した窒素が下流へ流出する際にこれを希釈する効果が期待されているが、森林が窒素飽和して渓流水中の窒素濃度が高くなるとその効果が十分に発揮できなくなることが考えられる。既往の調査結果から、茨城県の恋瀬川流域では、森林への窒素流入量が多く、流出する渓流水中の硝酸態窒素濃度が高いことが分かっている。農業生産が活発な同流域の河川水は森林からの渓流水による窒素の希釈を十分に受けずに霞ヶ浦に注ぎ込んでいることが考えられる。このことを確認するため、恋瀬川本流の河川水、恋瀬川流域内に位置する筑波共同試験地の窒素飽和した森林の渓流水、茨城県北部に位置する桂試験地の窒素飽和していない森林の渓流水について、溶存態全窒素濃度を比較した。桂試験地の渓流水中の全窒素濃度は約0.2mg/Lで、これは窒素飽和していない健全な状態にある森林の値と位置付けられる。これに対して筑波共同試験地の渓流水中の全窒素濃度は約2mg/Lで、桂試験地の10倍であった。同期間の恋瀬川本流の全窒素濃度は約3mg/Lであり、筑波共同試験地の渓流水中の全窒素濃度は農地域を経由した河川水と大きく変わらないことが確認され、同流域の森林が十分に希釈効果を発揮していないことが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
課題における重要なサブテーマである、大都市圏周辺の間伐無実施の過密林分における「窒素過剰流入」が森林土壌の化学性および渓流水質に及ぼす影響の解明については、恋瀬川流域を対象とした解析に着手できたが、もう一つの重要なサブテーマである「豪雨頻度の増加」が中山間地域の農林地における土壌中の水と物質の移動・貯留、流出に及ぼす影響の解明については解析前のデータ収集の段階に留まった。次年度は双方のサブテーマについて解析を進める。
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Strategy for Future Research Activity |
農地および林地の管理放棄が土壌の物理性、化学性、水および物質流出特性に及ぼす影響に関する現地調査および文献調査を継続する。大都市周辺の間伐無実施の過密林分における土壌の化学性および窒素流出の実態を現地調査および文献調査により明らかにし、樹冠の粗密の度合いが窒素沈着に及ぼす影響を明らかにする。現地調査および文献調査で情報を集めた中山間地域の農林地流域を対象に、モデルを用いて水と物質の流出を再現する。ライフサイクルアセスメントの手法により、中山間地流域の機能の低下による環境インパクトの変動を評価する。
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Causes of Carryover |
解析対象とする中山間地流域の具体的な選定が遅れたため、データの取得に必要な物品購入費、旅費、人件費を当初計画通りに使用できなかった。次年度早期に選定を済ませて解析に必要な現地観測および文献データを急ぎ取得するため、次年度の物品購入費、旅費、人件費交付額に今年度未使用分を合わせて使用する。
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