2020 Fiscal Year Research-status Report
Security Evaluation Methods in Trust Infrastructure Based on Engineering and Economics
Project/Area Number |
17KT0081
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
松浦 幹太 東京大学, 生産技術研究所, 教授 (00292756)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2022-03-31
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Keywords | トラスト基盤 / ブロックチェーン / 暗号通貨 / 高機能暗号 / プライバシー保護 / セキュリティ経済学 / 検証証明 |
Outline of Annual Research Achievements |
工学的研究では、高機能暗号の研究において、プライバシーに配慮したデータ処理技術の適用範囲を広げる開発を進めた。トラスト基盤としてのブロックチェーンに実装するアプリケーションには、複雑なプライバシー要件が課されるものが少なくない。中でも、サーバにクエリや入力の意味を開示せず所望の品質で情報検索や決定性有限オートマトンのタスクなどを実行させる仕組みは、応用範囲が広く、トラスト基盤との親和性が高い。そこで、本研究では、2019年度までに基本的な成果を出していたプライバシー保護型情報検索技術の完成度を高め、当該分野の根底にある安全性定義に関する新たな知見とともに、複数のジャーナル論文を著した。 経済学的な研究では、「ブロックチェーンに追加する記録(暗号通貨の送金情報など)が正しいことを信頼できるか(正しいことを誰かが検証した証拠があるか)定かでない」という問題を、2019年度までに行動経済学的に分析し抽出していた。この問題を本研究の工学的アプローチ(暗号技術)によって解決する手法についても、アイデアは、2019年度までに考案し国際会議で提案していた。2020年度は、実際のブロックチェーンのコンセンサスプロトコルに修正を加え提案手法(検証証明技術)をノードレベルで実装し、基本的なパフォーマンスデータを取得した。ただし、国際試験ネットワーク環境を活用した技術評価は、新型コロナウィルスの影響でインシデントレスポンス体制などの管理体制を十分確保できないため断念し、ノードレベルのパフォーマンス評価結果をシステムレベルの波及効果推定に活用する理論研究で代替することとした。このような代替措置をとっても学術的に高いインパクトを確保できるようにするため、工学的な波及効果だけでなく経済学的な波及効果も明らかにし、両者の関係性に関する知見を得るためのフレームワークを構築中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
要素技術単独の研究では、順調に成果が出ている。しかし、それらのうちトラスト基盤における波及効果などのシステム的な観点でもっとも重要な検証証明技術に関して、国際試験ネットワーク環境を活用した技術評価を新型コロナウィルスの影響で断念し、ノードレベルのパフォーマンス評価結果をシステムレベルの波及効果推定に活用する理論研究で代替することとした。このような代替措置をとっても学術的に高いインパクトを確保できるようにするため、工学的な波及効果だけでなく経済学的な波及効果も明らかにし、両者の関係性に関する知見を得るためのフレームワークを構築中である。この構築が、最終年度にさしかかってもまだ十分進んでいないため、総合的には、やや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
要素技術に関する工学的研究のうち、汎用性の観点から、プライバシー保護型決定性有限オートマトンの研究に重点を置き、完成度の高い成果を目指す。また、工学的波及効果も経済学的な波及効果も明らかにし、両者の関係性に関する知見を得るためのフレームワーク構築を急ぐ。後者の進捗状況次第では、プロジェクト全体のとりまとめを1年延長することも検討する。
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Causes of Carryover |
国際試験ネットワーク環境を活用した技術評価を新型コロナウィルスの影響で断念し、関連する支出が滞ったため、次年度使用額が生じた。評価の代替手法の推進に使用する計画だが、研究代表者自身の医学的理由もあって推進するペースに限界があることから、プロジェクト全体のとりまとめを1年延長することも検討する。
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