2018 Fiscal Year Research-status Report
Economic Trust Model for Information Flow on Real World Data
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17KT0082
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
河口 信夫 名古屋大学, 工学研究科, 教授 (10273286)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
原 隆浩 大阪大学, 情報科学研究科, 教授 (20294043)
重野 寛 慶應義塾大学, 理工学部(矢上), 教授 (30306881)
白石 陽 公立はこだて未来大学, システム情報科学部, 教授 (90396797)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 情報流 / 経済モデル / トラストモデル / Synerex / Synergic Exchange |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、多様なデータソースとサービスの間で柔軟なデータ処理を行う「情報流ネットワーク」において、トラスト経済モデルの実現を目的とする。本年度は、昨年に引き続き情報流ネットワークに関わる以下の技術の開発を進めた。 (a) 情報流ネットワークにおけるデータ処理・検索・モニタリングのための基盤技術として、空間情報や位置情報、キーワード等を含む高度なストリームデータを対象とした、近傍データモニタリング、Top-kデータ(ユーザの嗜好に合致した上位k個のデータ)モニタリング、特徴パターン(モチーフ)モニタリングのための有効なアルゴリズムを考案した。 (b) モバイルクラウドセンシング(MCS)において、過去のオークション勝率に基づいたセンシング参加ユーザの選択と、改変されたデータを送信回数を反映したユーザの評価値(ユーザ・トラスト)の算出を組み合わせて利用することで、持続的なMCS のためのインセンティブメカニズムを提案した。提案手法では、センシングコストは低いが評価値も低いユーザから、センシングコストは高くても評価値が高いユーザへオークション勝利機会を分散する。 (c) 実世界で活用可能な情報流ネットワークおよびトラスト経済モデルを構築するための実験場として、バスデータを例にとり、情報流ネットワーク上での処理を検討した。バス利用者にとって、バスの現在地情報だけでなく乗車予定のバスの混雑状況も重要な情報である。バス利用者を情報生成ノードとする情報流ネットワークを想定し、バス利用者の歩行動作分析に基づく混雑推定手法の検討を行った。バス車内の混雑度合によって乗車中のバス利用者の歩行動作が異なることに着目し、基礎実験を行った。 (d) 情報流ネットワークを実現する枠組みとして、Synergic Exchange を用い、異なるサービス提供者間のトラストモデルとその実装に関する検討を開始した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究は多様なデータソースとサービスの間に「情報流ネットワーク」を構築しその上で、トラスト経済モデルを実現することを目的としており、本年度は、情報流ネットワークの(a)アーキテクチャおよび(b)トラストモデルの検討、(c)実世界実験の整備が目標となる。それぞれ(a)についてはデータ処理のための基盤技術、(b)については、トラストモデルにおけるインセンティブメカニズム、(c)については、バス利用者の行動分析に関する成果を得た。これらは、論文誌・国際会議を含む9件の成果として発表されており、順調に研究は進んでいる。 さらに、本年度からは、情報流ネットワークの実装として、Synergic Exchange(Synerex)という、需給交換によって様々なサービス提供を行うことを可能とするプラットフォームを採用する検討を始めている。Synerexでは、超スマート社会を実現するための機構として、様々なサービスプロバイダが相互に需要と供給に関する情報をやりとりし、その選択によって、サービスを実現している。プロバイダ間には、様々な契約関係やグループ構成が存在しうるため、これらを包括して表現できるトラストモデルが必要となる。また、需給交換ネットワークは、一種の情報流ネットワークといえるため、Synerex上でのトラストモデルの構築は、情報流ネットワークにおけるトラストモデルとしてとらえることができる。Synerexでは、すでにモビリティサービスにおける実証実験を進めており、トラストモデルの実世界応用としても活用可能である。また、実際のサービス実証を行うためには、サービスコストのやりとりが必要となり、ここには、経済モデルの実装が必要となり、本研究の成果が活用できる。 以上より、本研究は、当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度は、各研究項目間での連携も含め、統合的な成果を創出も含めた研究開発を実施する。各研究項目では、以下のような計画実施を計画している。 (a)アーキテクチャ: さらに高度な検索・モニタリング技術の開発を進める。開発した技術は、実システム上に実装し、実データ等を用いた詳細な評価実験により、その有効性を検証する。 (b)トラストモデル: トラストの算出手法、その管理手法、システムへの導入するためのモデルについて研究を進める。これまでにMANETやMCSへトラストを導入し、システムモデルを変更することで、セキュリティ、データ品質を改善することを検討してきた。これらに加えて、トラストのコストへの効果や影響について検討する。 (c)実世界応用: バスの位置情報および混雑状況を共有するシステムを想定する。バス利用者に対して、混雑状況を提供する上で、バス管理システムからの情報は信頼性が高いが、プライバシなど様々な制約があり、リアルタイムに情報を提供できるとは限らない。一方で、別のバス利用者から提供される混雑情報は、信頼性は低いが、即時的な情報提供ができる可能性がある。そこで、このような信頼性や価値(即時性)の異なる情報流データソース(バス、利用者)から構成される情報流ネットワークを想定し、2018年度に検討したバス利用者の歩行動作特徴に基づく混雑推定の手法を拡張し、バスネットワーク上で評価を行う。同時に、乗降客数に関するICカードデータの収集を行い、理想環境下での混雑推定方法についても検討を行い、比較・評価を行う。 さらに、(d)需給交換プラットフォームであるSynerexを用い、様々なサービスプロバイダにおける相互の信頼関係を示すトラストモデルの実装を行う。このモデル上には、(a)(b)(c)の研究項目で得られた知見を導入することにより、統合的な成果を生み出すことが可能になる。
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Causes of Carryover |
実験で購入する予定であった機器が納入できなかったため、若干の次年度使用額が生じたが、研究計画については影響はない。
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