2017 Fiscal Year Research-status Report
紛争の発生とその緩和に関わる人間本性の理解 -心理・神経・遺伝学的研究-
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17KT0088
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
野村 理朗 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (60399011)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 畏敬 / 高次感情 / 文化的自己観 / 攻撃性 / 共感性 |
Outline of Annual Research Achievements |
主には以下の成果が得られている。1-1.Aweの日本語訳に関わる検討:成人432名(女性256名,Mage=38.9±10.4)に対し“Positve-awe”と“Threated-awe”の各々の画像(絶景もしくは津波等)を提示(Gordon et al.(2016)),回想法による記述,16種の高次感情(畏敬,畏怖,恐怖,尊敬等)の9件評価,「畏敬」と「畏怖」の二択によるラベリング課題を実施し,“Positve-awe”と「畏敬」,“Threated-awe”と「畏怖」との対応等が確認された。1-2.畏敬が攻撃行動を喚起する規定要因の検討: 成人59名(女性25名,Mage=21.4±1.2)において,畏敬導入(大自然の映像等)による効果を,統制条件と比較検討した。その結果,畏敬による攻撃行動喚起の要因として,1) 気質(開放性)や保守傾向等の個人内要因,2) 自己概念の縮小,3)集団間の弁別性等との関わりが確認された。1-3.攻撃行動と文化的自己観との関わりの検討: 成人118名(女性45名,Mage = 18.6±1.8)において,死の顕現化により特定の条件(集団表象の活性化等)のもとで生じる外集団への攻撃行動が,相互協調的自己観により調整されることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のとおり、複数の実験を実施し、先行知見と整合する、あるいは従来にない畏敬の負の側面に関する新たな知見を見出すことができたことから、研究はおおむね順調に進展しているものと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は上記の知見をふまえ、畏敬にかかわる新たな心理質問紙尺度を開発するとともに、行動実験と並行して、核磁気共鳴画像法を用いて、畏敬にかかわる中枢神経基盤を明らかにする。
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Causes of Carryover |
遺伝子多型の解析に関わり、途中解析装置の一部に消耗劣化から来ると思われる問題が生じたため、一時解析を中断し、トラブルシュート等の対応にあたった。このことにより、試薬等の購入量が予定よりも一部少なく済んだこと、これにともなう脳賦活研究の参加者謝金等が浮いたため、次年度に繰り越すこととなった。 平成30年度については、上記のとおり、脳賦活研究の参加者謝金、試薬等の購入に使用する予定である。
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Research Products
(5 results)