2017 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
17KT0093
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
高柳 敏幸 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90354894)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 反応動力学 / ポテンシャルエネルギー曲面 / 遷移状態分光 / 光電子スペクトル / 非断熱遷移 / 波束動力学 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、まず典型的な水素原子移動反応であるI + HI反応の遷移状態スペクトルの理論計算を行った。これまで当研究室では、一枚のポテンシャルエネルギー曲面だけを用いた断熱動力学の理論計算を行ってきたが、これを発展させて、スピン軌道相互作用による非断熱遷移を含めた新しいポテンシャルエネルギー曲面を新たに開発した。そのポテンシャルエネルギー曲面を用いて、非断熱動力学計算を行った結果、遷移状態付近における非断熱遷移の重要性を見出しただけでなく、ピコ秒オーダーという極めて長い寿命を有する遷移状態付近に局在化した共鳴状態を見出した。また、この共鳴状態が実験的に十分観測可能であることを示した。これらの結果は、物理化学のトップジャーナルであるPhysical Chemistry Chemical Physics誌に掲載され、2017 Hot Articlesに採択された。 本年度は、さらに2つの進展があった。1つ目は、スピン軌道相互作用を含めた反応経路探索の簡便な方法論を開発したことである。スピン量子数が変化するスピン禁制反応では、非断熱遷移の場所が遷移状態として働く可能性がある。本研究で開発した有効ハミルトニアン行列法を用いると、そのような経路が簡単に見つけることができることが分かった。また、複雑系の反応の遷移状態を議論するため、水数個とNaClからなるクラスターについて反応経路探索を行い、イオン解離の遷移状態を200個以上求めることができた。凝縮相化学反応の遷移状態概念を根本的に問い直すことにつながると考えられ、来年度以降さらに発展させる予定である。以上の研究結果は、Journal of Computational Chemistry誌に投稿し、2報とも受理された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
気相反応の遷移状態分光の理論計算については、予定していた時期よりも早めに行うことができた。そのため、スピン禁制反応および凝縮相の反応経路探索に取りかかることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度末に論文にしたスピン禁制反応および凝縮相の反応経路探索の研究を発展させて、遷移状態概念の拡張について議論する。
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Causes of Carryover |
年度末の3月末に国際会議(ギリシャ)に出席した際の出張費用を、事務処理の関係で次年度支払いとすることになったためである。
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Research Products
(2 results)