2017 Fiscal Year Research-status Report
トランスメタル化反応の遷移状態制御による遷移金属協働触媒反応の創出
Project/Area Number |
17KT0098
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
仙波 一彦 京都大学, 工学研究科, 助教 (30712046)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
榊 茂好 京都大学, 福井謙一記念研究センター, 研究員 (20094013)
|
Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
|
Keywords | トランスメタル化 / 銅 / パラジウム / クロスカップリング / コバルト |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,遷移金属錯体間でのトランスメタル化反応の遷移状態制御により,①触媒制御による立体反転クロスカップリング反応,および②典型金属反応剤を全く用いない炭素-炭素不飽和化合物と炭素求電子剤との水素化クロスカップリング反応の開発を目的としている。 ①に関して本年度は,アルキル銅とアリールパラジウム間の立体反転を伴うトランスメタル化の機構研究を計算化学を用いて行った。その結果,遷移状態構造はパラジウム,銅に結合した炭素,および銅が直線上に並んだ構造であることが分かった。また,その遷移状態構造において,銅に結合する炭素は5配位構造であることが明らかとなった。立体反転を伴うトランスメタル化の制御因子を明らかにするために,銅上アルキル基の置換基効果を調べた。その結果,アルキル基上にフェニル基が置換した場合にはトランスメタル化は立体反転で進行するが,アルキル基が置換した場合には立体保持で進行することを示唆する結果が得られた。これは,遷移状態における銅上に結合した炭素の5配位構造を安定化するために,フェニル基による共役効果が重要であることを示す結果である。本知見は,触媒制御による立体選択的なクロスカップリング反応の開発に極めて重要な知見である。 ②に関して本年度は,ビスイミノピリジン配位子を有するアルキルコバルト(I)とアリールパラジウム間でのトランスメタル化の遷移状態を計算化学により導出した。その結果,本トランスメタル化は4員環遷移状態を経由して進行することが明らかとなり,本研究を遂行する上で重要な知見が得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本提案課題の「触媒制御による立体反転クロスカップリング反応」の開発に重要な,アルキル銅とアリールパラジウム間での立体反転を伴うトランスメタル化の遷移状態に関する知見が得られ,また,「典型金属反応剤を全く用いない炭素-炭素不飽和化合物と炭素求電子剤との水素化クロスカップリング反応」の開発に重要なアルキルコバルトとアリールパラジウム間でのトランスメタル化の遷移状態構造の導出に成功したため。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度に得られた遷移状態に関する知見を基に,①触媒制御による立体反転クロスカップリング反応,および②典型金属反応剤を全く用いない炭素-炭素不飽和化合物と炭素求電子剤との水素化クロスカップリング反応の開発を行う。
|
Causes of Carryover |
本年度は,計算化学による検討を主に行い,当初予定していた実験化学による検証を行わなかっため次年度使用額が生じた。次年度は実験化学による検証を開始するため,本検証に必要な消耗品費に重点的に割り当てる。
|
Research Products
(4 results)