2017 Fiscal Year Research-status Report
新しいVB理論による2核金属錯体の結合生成過程における遷移状態とスピン構造の研究
Project/Area Number |
17KT0103
|
Research Institution | Quantum Chemistry Research Institute |
Principal Investigator |
黒川 悠索 特定非営利活動法人量子化学研究協会, 研究所, 研究員 (30590731)
|
Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
|
Keywords | シュレーディンガー方程式 / Free Complement法 / 変分法 / ポテンシャルカーブ |
Outline of Annual Research Achievements |
一般の原子・分子に対するシュレーディンガー方程式を正確に解くための理論として、Free Complement (自由完員関数)法が中辻によって提案されている。本理論は、まず初期関数を用意し、FC理論に基づいて完員関数系を生成する。こうして得られる完員関数の線形結合をとり、order = nのFC波動関数 を得る。この時、初期関数は任意に選んでも良いが、本研究では新たに提案されたLocal bond 型の波動関数を用いた。一般に完員関数には電子間距離rijを露わに含んだ積分困難な関数が含まれる。しかし化学的に重要な関数は1電子関数であり、これらの積分困難な完員関数は一般には全エネルギーに効きうるが重要な化学的性質にはほとんど効かない、という推察に基づき、本研究では、まず積分困難な完員関数は除き、積分可能な完員関数のみを用いて変分計算した。本方法をまずCH分子に適用した。その結果、2重項状態及び4重項状態の基底・励起状態のポテンシャルカーブを容易に求めることができた。この結果はMetropoulosらによるMRSDCI計算で得られる結果と比べ関数の数は少ないにも関わらず、同等の精度で求められている。ポテンシャルカーブは結合生成を解析する上で重要であるが、本方法はポテンシャルカーブを得るのに有用であることを示すことができた。さらに、同様の方法を、窒素分子、フッ素分子及びMo2分子に適用した。これらの分子系は、一般の分子軌道法でポテンシャルカーブを得るには多配置理論が必要なため複雑な計算を必要とするが、本理論を用いると特に複雑な計算をすることなくポテンシャルカーブが正しく得られた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究計画に沿って、Free Complement積分法のプログラムの開発及び加速を行った。それにより、Mo2(84電子系)という大きな系でも実用的な時間でそのエネルギーと波動関数を求めることが可能となった。また基底・励起状態のポテンシャルカーブも求めることができることが確かめられた。そのため、(2)おおむね順調に進展している、とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
金属-金属結合であるMo2のポテンシャルカーブが得られることが確認できたので、平成30年度は、これ以外の金属結合を有する系についても同様に検討を行う。その際、結合生成過程における電子状態の変化等を解析できるよう、理論・プログラムともに整備する。また、1重項状態だけでなく異なるスピン状態についても検討を行う。
|
Causes of Carryover |
大型計算機を購入予定であったが、本年度は外部計算機等を利用することが可能となったため購入せずに済ますことができた。その分は次年度に計算機購入及び大型計算機利用料として使用し、さらなる研究の加速化を計る。またその他の物品についても機関内で共同利用することができたため新たには購入しなかった。次年度以降はこれらが利用できる保証がないため、本研究課題を円滑に進められるよう必要物品等を適宜適切に購入する。また共同研究として携わる研究者に対する謝金や学会旅費等に使用する。
|