2017 Fiscal Year Research-status Report
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17KT0105
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
佐藤 健 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (00303602)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 小胞輸送 / 低分子量GTPase / 小胞体 / COPII |
Outline of Annual Research Achievements |
真核細胞内での物質輸送システムである小胞輸送において、この反応を駆動する因子群のダイナミクスから基本原理を明らかにするために、小胞体(ER)からの輸送小胞(COPII小胞)の形成をモデルとして、COPII小胞の形成を直接駆動する因子群、およびそれらの制御を担う因子群の動態の解析を行った。 顕微鏡下に形成させた人工脂質平面膜上に、精製因子のみによってCOPII小胞の形成反応を再現した独自の実験系を用いて、ターゲットとする各因子を蛍光標識して可視化することにより、COPII小胞形成反応過程における、それぞれの因子の動態を検出し、解析を行った。 その結果、COPIIコートの膜へのリクルートの際には低分子量GTPaseであるSar1が必須であるものの、その後、Sar1はすぐに膜から解離してしまうことが明らかとなり、膜上で一旦連結されたCOPIIコートは、Sar1が解離した状態でも安定に存在できるという新たなメカニズムが明らかとなった。 また、ERからのCOPII小胞の形成は、小胞体出口部位(ER exit sites)と呼ばれるサブコンパートメントにおいてのみ行われていると考えられており、このER exit sitesが受ける高度な制御によって輸送反応が時空間的に制御されていることが示唆されている。このER exit sitesの形成に深く関与することが示唆されている足場タンパク質Sec16について、人工脂質平面膜上における動態を解析したところ、COPIIコートが膜上で連結して形成するクラスターにSec16が効率よく取り込まれることを明らかにした。さらに、このSec16の取り込みは、Sar1のGTP加水分解サイクルに依存した現象であることが明らかとなり、COPII小胞形成過程において、Sec16がSar1のGTP加水分解活性に直接関与していることを示唆する新たな知見が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画において設定した年度内に達成すべき項目について、ほぼ全てについて着手し、目的の実験系の構築と、それを用いた観察・計測を行うことができ、次年度の研究につながる成果が得られている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に構築した実験系をさらに最適化し、その実験系を用いて輸送小胞の形成に関わる因子群のダイナミクスを検出して解析を行う。
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Causes of Carryover |
(理由) 初年度において、実験系の構築が予想外に早期に完了したため、多くの試薬や消耗品を必要とする条件検討に費やした時間が相対的に少なくなったため。 (使用計画) 初年度に引き続き、小胞体からの輸送小胞形成の分子メカニズムについての解析に伴い、分子生物学試薬、微生物培養試薬、生化学試薬、プラスチック製品などの消耗品の購入を行う。また、研究補助者の人件費、成果発表のための旅費、および研究成果の論文発表のための費用についても計上する。
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Research Products
(2 results)