2018 Fiscal Year Research-status Report
管径の恒常性維持に働く細胞力覚システムの応答特性の解明
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17KT0107
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
平島 剛志 京都大学, 医学研究科, 講師 (10620198)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 分岐形態形成 / FRETイメージング / 力学摂動 / ERK活性 / 肺 / マウス |
Outline of Annual Research Achievements |
多細胞組織のかたちや大きさの自律的な制御に働く細胞の力受容と応答の仕組みを明らかにするために、平成30年度は肺上皮の形態変化に伴う分子活性の変化を調べた。特に、形態形成に重要なシグナルであるMAPキナーゼ/ERK(細胞外シグナル制御キナーゼ)の活性に着目し、これらの分子活性をFRET(蛍光共鳴エネルギー移動)イメージング計測可能な遺伝子改変マウスを用いて実験を進めた。前年度は、おもに胎生12.5日目の肺を用いて実験を行なっていたが、今年度は実験の目的からおもに胎生13.5日目のサンプルを用いて実験を行った。前年度と同じく、単層上皮の曲率とERK活性強度を定量し、これらが正に相関していることを明らかにした。 組織内応力に摂動を加え、それに対するERK活性応答をFRETライブイメージングにより計測した。単離した肺上皮組織を、シリコンゴム製のチャンバー内に満たされたハイドロゲル内で培養し、チャンバーを圧縮もしくは伸展することで力学摂動を加えた。その結果、肺上皮の曲率変化に応じてERK活性が変動することがわかった。すなわち、上皮層の曲率が大きくなるとERKが活性化し、曲率が小さくなるとERKが不活性化する。また、肺上皮細胞を平面培養し、同様に圧縮・伸展刺激に対するERK活性応答を調べた。平面培養系での圧縮・伸展に対しては同様のERK活性変化が観察された。これらの結果より、細胞内応力変化でなく上皮層の曲率変化に応じてERK活性強度が変化することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度は、細胞や組織に対する力の負荷とそれに対するERK活性応答の検出に力を入れた。年度はじめに、細胞や組織に対し、圧縮・伸展の力学刺激を安定的に加える実験系を確立することができ、ERK活性応答のデータを取得することができた。最終年度に行う多細胞力学シミュレーション解析のための基礎データを取得することができ、研究を順調に進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度は、これまでに取得したデータをもとに多細胞力学シミュレーションの解析を行う。これまでに、高い曲率を有する肺上皮層ではERK活性が高いこと、ERK活性が細胞骨格に働きかけて細胞の形態変化を引き起こすことを明らかにしている。それらの実験事実をもとに、離散モデルと連続モデルの双方のアプローチで理論的な解析を進め、細胞力覚システムの応答特性を明らかにする。
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Research Products
(12 results)