Outline of Annual Research Achievements |
(1)脊索の発生に関わる要素として、液胞形成・細胞膜輸送・細胞外基質形成・細胞増殖とアポトーシスについてまとめた総説を執筆し、「液胞膨圧ー脊索鞘強度平衡モデル」を提唱した。本モデルは、個々の脊索細胞が膨圧と鞘強度に応じた応答をすることで、細胞運動非依存的に脊索という棒状の構造を自己組織化できるというものであり、実験的・理論的検証が今後期待される。 (2)フロリダナメクジウオ(Branchiostoma floridae)の神経胚~幼生期のcDNAから、caveolin, colA, col9, loxl1/5, loxl2/3/4, leprecan, b4galt, b3gnt, chst, calumenin, copz, lamp1/2, slc38a7/8といった脊椎動物の脊索の細胞外基質形成や細胞膜輸送に関わる遺伝子のオーソログをクローニングした。これらの遺伝子が他の脊索動物と同様に脊索で特異的に発現するのかを、フロリダナメクジウオ胚を用いたin situ hybridizationで検討した。その結果、すでに脊索での発現が報告されているcolAに加え、caveolin, col9, loxl1/5, loxl2/3/4, leprecan, chst, calumenin, copzが脊索で発現することを見出した。中でも細胞外基質形成に関わる遺伝子群の幼生期における発現は、細胞増殖している脊索前端と後端で強い一方、細胞増殖が停止した体幹部の脊索では弱かった。この結果は、これらの遺伝子群が脊索の祖先的構成要素として、脊索動物の出現時から脊索の形態形成に深く関わってきたことを示唆するとともに、「液胞膨圧ー脊索鞘強度平衡モデル」がナメクジウオへも適用できる可能性を示すものである。
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