2018 Fiscal Year Research-status Report
視知覚・運動連関の獲得過程における機能的神経回路の創成原理の探索
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17KT0115
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Research Institution | National Institute for Physiological Sciences |
Principal Investigator |
木村 梨絵 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 特任助教 (60513455)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 試行間ばらつき / 神経生理 / 神経回路 / 学習 / 行動 / マルチユニット記録 / 視覚野 |
Outline of Annual Research Achievements |
生物学における多くの事象は、“揺らぎ”を含んでいる。本研究では、特に、学習によって、神経回路が揺らぎを含みながら、どのように変化していき、依然として揺らぎをもった状態で、機能的神経回路が創成されるのかについて明らかにすることを目指している。 平成29年度には、低コントラストの視覚刺激と高コントラストの視覚刺激を用いて、難易度が異なる課題を遂行するラットの一次視覚野の神経活動を解析した。この結果、学習によって、特徴的な神経活動を示すようになり、また、細胞集団の神経活動は、学習前後で大きな試行間ばらつきを維持しているものの、学習後には精度高く情報を保有するようになることが明らかになった。 平成30年度では、学習後には、大きな揺らぎが存在しながらも、縦縞・横縞の情報を正確に保持できている原因を探索した。この結果、学習によって、縦縞・横縞の発火頻度の違いが、単一細胞レベル、多細胞レベル、いずれにおいても、大きくなることが明らかになった。一方、縦縞、横縞の応答選択性は、学習によって多少の変化は認められるものの、大きな変化は観察されなかった。したがって、学習で発火頻度が全体的に同程度に増大することが、揺らぎながらも正確な情報表現を可能にしていると考えられた。実際、学習前には存在せずに、学習後に出現するようになる特徴的な神経活動を示す細胞の、自発的な活動、視覚応答、いずれにおいても、発火頻度が高かった。さらに、学習後には、視覚誘発電位(VEP)が大きくなることが確認された。学習後には、興奮性が高まり、情報をより分離して表現するようになることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成29年度までに明らかになっていた、学習後には、大きな揺らぎが存在しながらも、情報を正確に保持できているという現象の原因を探索することに成功したので。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究によって、学習によって、大きな揺らぎを維持しながらも、情報を正確に保持できていることが明らかになり、さらには、発火頻度を全体的に同程度に増大させることによって、情報をより強く分離して表現するようになることが、揺らぎながらも正確な情報表現を可能にしていると考えられた。しかしながら、試行間ばらつきが存在し続ける意義について明らかにできていない。神経活動を操作するなどして、揺らぎの存在意義を探索する。
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Causes of Carryover |
平成30年度は、実験よりも、実験データの解析に時間を費やした。このため、当初予定していたよりも研究経費がかからなかった。2019年度以降では、新たな実験も行う予定である。このため、実験機器を購入する必要があると考えている。
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Research Products
(7 results)