2018 Fiscal Year Research-status Report
心拍変動ダイナミクスにみられる病態遷移過程の数理的構造の理解とその応用
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17KT0127
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
清野 健 大阪大学, 基礎工学研究科, 教授 (40434071)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 心拍変動 / 予後予測 |
Outline of Annual Research Achievements |
Quasi-Recurrent Neural Networkを用いた心不全患者の生命予後予測 心拍変動患者の心拍変動特性は、生命予後の予測指標として有用性が示されてきた。従来のアプローチでは、各研究者の経験とアイデアにより、心拍変動の特性を表す指標が導入され、その有用性が生存時間解析で検証されてきた。一方で、ニューラルネットワークなどの機械学習のアプローチでは、事前の特性指標の計算(特徴量抽出)が必要ない方法も存在する。このような方法については、画像解析などの分野でその有用性が示されている。本研究では、心拍変動時系列について、事前の特徴量抽出を行う従来法と、特徴量抽出を行わないQuasi-Recurrent Neural Network (QRNN)の予測結果を比較した。ここでは、心不全患者108例の 24 時間ホルター心電図から、13 時から14 時までのRRデータを抽出して使用した。予測するアウトカムは全死亡とした。特徴量抽出に基づく予測では、SDNNなどの心拍変動指標 11 種を計算し、ランダムフォレストを用いて予測モデルを構築した。一方で、QRNNでは、前処理として、時系列のトレンド除去のみを行った。4年の観察期間中に39例が死亡した。QRNNとランダムフォレストのAUC はそれぞれ0.68と0.67で有意差はなかった。次いでQRNN の予測に基づき2群に層別化したときの生存率には有意差を認めた (log-rank test: p < 0.01)。追加の検証により、心拍変動指標を用いた予測モデルとQRNNを用いた予測では、異なる特徴量を用いて、生命予後を予測している可能性が示された。今後、治療戦略に役立つ情報を得るために、QRNNがどのような特徴を学習し、死亡リスクを予想しているのかを明らかにする必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成30年度については、新たにニューラルネットワークモデルや深層学習を用いた予後予測について検討した。Quasi-Recurrent Neural NetworkおよびLong Term Short Memoryを用いて検討の結果、これらの予測モデルは、心拍変動時系列の特徴を学習する上でも有用であることが示された。現状では、患者データの例数が数百から数千と小規模であるため、予測性能は中等度にとどまるが、今後、例数が増加することで、予測性能は向上すると考えられる。このようなアプローチは、予後予測や病態遷移過程の理解に役立つと考えられる。さらに、前年度の成果を論文化することもできた。以上より、本研究課題の進捗状況は順調と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、ウェアラブルデバイスを活用し、実世界環境での生体情報モニタリングの可能性を検討する。近年、生体センサの小型化、軽量化により、着用感がほとんどなく、心拍数や身体活動量などを容易に計測可能なウェアラブルデバイスが登場している。そのようなデバイスは、医療や日常の健康管理においても有用と考えられる。本研究では、そのようなデバイスで計測される心拍数・心拍変動の解析についても検討する。
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Research Products
(10 results)