2017 Fiscal Year Research-status Report
Empirical research on motion control function of rallying call and onomatopoeia in care interaction
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17KT0140
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Research Institution | The University of Shiga Prefecture |
Principal Investigator |
細馬 宏通 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (90275181)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
篠原 和子 東京農工大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (00313304)
田中 秀幸 東京農工大学, その他の研究科, 助教授 (70231412)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2020-03-31
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Keywords | 身体動作 / オノマトペ / 身体動作 / 音象徴 / 多感覚 / マルチモダリティ / 共同作業 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者細馬は、1: 高齢者の立ち上がり、移乗場面の相互行為ついて事例を集めた。2: 介助者が入居者の能力を推測したりその見積もりを更新する際、「よっしゃ」などの簡単な掛け声を用いる事例を検討した(第10回間合い研究会)。3: 二人一組でテーブルの運搬してもらう実験を行った。本格的に持ち上げる直前に、参加者のそれぞれが100ms-300msの短い持ち上げ動作「トライアル」を行うことで、共同作業のタイミングを調節していることを示した(第82回心理学会で発表予定)。4: 語頭がCVCVタイプのオノマトペに随伴する動作の微細なタイミングが促音、撥音、長音のオノマトペ標識に左右されることを明らかにした(15th IPrA)。 分担者篠原は、掛け声が言語音によって産出されることから、言語音が身体動作とどのように結びつくかを音象徴の観点から分析した。これまで行ってきた音象徴実験を身体動作という観点から整備するため、国内学会、国際学会等で関連研究に関する情報収集を行った。これをもとに、分担者田中とともに所属大学でデータ収集を開始し、結果の分析から、身体の動き、特に腕の運動の速度変化が、阻害音・共鳴音などの音声素性と直観的にむすびつく傾向があることがわかった。現在、論文化を急いでいる。 分担者田中は、身体の動きと言語音の関係性を解明する目的で実験研究を行なった。その結果、子音阻害音は,加速度運動と星形図形に対して有意に高い出現率が認められ、子音共鳴音は、等速運動と球形図形に対して有意に高い出現率を示した。これは速度変化の大きい直線鋭角な運動イメージには阻害音が,速度変化の小さいスムーズな運動イメージには共鳴音が結びつくことを示唆しており、音象徴現象が多感覚(少なくとも視覚と運動感覚)横断的であることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各代表者、分担者の研究は順調に進行している一方で、高齢者施設のデータを用いたデータセッションは当初の予定に比べてやや遅れている。これは、科研の決定が7月中旬で、初年度のデータ収集期間が限られたこと、分担者が予想以上に他科研の代表者、分担者を兼ねることになり、それぞれの活動に時間をとられたことが原因と考えられる。今後は、代表者、分担者のより緊密な連携が必要である。 テーブル運搬実験から、掛け声、オノマトペと動作の関係を捉えるには、これらの時間構造の基本的な関係を明らかにすることが重要であることがわかった。しかし、この実験では、ビデオ映像上の変化から動作を計測しているため、当人が実際にいつ力をこめているか、お互いの力の入り方から感じられるであろう触知的な相互行為はいつどのように起こるのかについてはまだ明かではない。今後この点を考慮した実験が必要である。 篠原により、音韻と動作の質的な側面が、篠原・田中の共同研究により体感される運動と音韻の結びつきが実証的に明らかになりつつある。これらの知見が、実際のコミュニケーションにどのように機能しているのか、またこうした音韻イメージを用いたことばによって、お互いの動作はリアルタイムでどのように制御されているのかを明らかにするのが今後の課題である。 細馬は音韻と動作の時間関係を考えるための基礎理論として、音韻の微細な構造と動作の構造が短い時間の間に個人内、個人間で相互作用を行う「運動調整仮説」を提唱している(2018年3月日本語用論学会メタファー研究会で発表)。今後、本プロジェクトの知見を統合して、この仮説をさらに洗練させる必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度は、前年度に撮影済みの高齢者・介護者間の相互行為データを用いたデータ・コレクションの作成とデータ・セッションを行う。データは大きく分けて、1: 移乗、立ち上がり場面における掛け声データ 2:日常会話における掛け声、オノマトペデータに分かれる。これらの場面について発声、動作のコーディングを細馬、城で、データ・セッションを細馬、篠原、田中、城で行う。 2017年度に、ユマニチュードの提唱者であるルネ・ジネスト氏と知己を得て、介護施設での高齢者の立ち上がりを実践する場面を撮影することができた。2018年度はこうしたデータについても、掛け声と動作の相互作用に注目して分析を行う。 篠原、田中の研究により、音韻と身体動作に関する量的、質的な知見が集まりつつある。これらと高齢者・介護者間の実践的データを組み合わせることで、掛け声やオノマトペの持つ身体イメージが、実際のコミュニケーションにどのように役立っているのかを明らかにする。 一方で、掛け声と動作の時間構造に関する基礎的な実験を行う。机の脚に重力センサーを取り付け、これを二人に掛け声をかけて運搬してもらう実験を行い、前年度に明らかになった本格的動作の直前に起こる「トライアル」の時間構造を明らかにする。重力センサーは、机が動く直前における運搬者の力の変化が微細に記述できるので、視覚的にはわかりにくい触知的な相互行為を記述できると期待される。
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Causes of Carryover |
科研採択決定が7月後半になったため、データ収集の計画に遅れが生じた。この結果、データの書き起こし作業に対する人件費・謝金分が次年度に繰り越しとなった。また、介護施設の施設担当者からの専門的知識の提供、実験に必要なセンサー器具の開発の作業も次年度送りとなり、謝金、その他の予算が繰り越しとなった。
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Research Products
(12 results)