2017 Fiscal Year Research-status Report
社会的ヘテロフォニーとしての漫才対話~オープンコミュニケーションの超分節性の解明
Project/Area Number |
17KT0143
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
岡本 雅史 立命館大学, 文学部, 教授 (30424310)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
阪田 真己子 同志社大学, 文化情報学部, 准教授 (10352551)
細馬 宏通 滋賀県立大学, 人間文化学部, 教授 (90275181)
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Project Period (FY) |
2017-07-18 – 2021-03-31
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Keywords | オープンコミュニケーション / マルチモダリティ / 相互行為 / 漫才 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、代表者岡本は、一人の話者の語りが中心となる演芸である落語と漫談に着目し、前者においてマクラから本題へと語りのモードが転換する場面において言語的な境界を示しつつも、非言語的・パラ言語的モダリティの層においてはその境界と時間的に一致しないことを明らかにし、語りの受け手に対する二重の境界設定がプロの噺家の語りの特徴であることを示唆した。一方、後者については、一人語りの中にも仮想的な対話場面の再現が万段において頻出することを示し、仮想的な語り手を導入する際の引用標識の戦略的な脱落が受け手の物語認知にとって有効な手段であることを明らかにした。いずれも社会言語科学会第41回大会で報告された。
次に、分担者阪田は、観客も漫才対話を支えるコミュニケーションの参与者であると仮定し、観客の存在が、漫才師のパフォーマンスにいかなる影響を与えているかを検討した。プロの漫才師による実証実験を実施し、ボケ、ツッコミという役割によって観客による影響の受け方が異なること、オープンコミュニケーションの参与者として、漫才師と観客が相互参照的な関係にあることを明らかにした。研究成果は、電子情報通信学会ヒューマンコミュニケーション基礎研究会、および国際会議International Conference on Culture and Computingにて報告された。
一方、分担者細馬は、漫才におけるボケとツッコミの身体動作と発話との時間関係に注目し、ボケによる笑いの認知点以外に、ツッコミとボケのマルチモーダルな行為関係が笑いに寄与している可能性について調査している。特に、センターマイクによって身体動作が制約を受けていた時代の漫才と、コンタクトマイクなどを用いて身体動作の自由度が増した時代の漫才を比較することで、近年の漫才が必ずしもマイクという資源の取り合いを前提としない動作を取り入れていることを分析している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度に当たる平成29年度は、漫才対話の新規収録を行わず既収録データの分析を行うことを予定していたが、実際には、それに基づく観客による演者のパフォーマンスへの影響の検証に始まり、拡声技術の進展に伴う新旧漫才対話における身体動作の自由度の比較分析、さらには落語や漫談など隣接分野の研究にも発展させることができた。また、ディスカッションの場としてセミクローズドな定例研究会を年度内に4回実施することができ、吉本興業との共同研究計画も確実に進展したため、上記の進捗評価とした。
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Strategy for Future Research Activity |
平成30年度は、吉本興業の協力に基づき、日本でも有数の実力派の漫才コンビを招聘し、詳細なインタラクションデータを音声・映像収録するとともに、本研究課題の鍵概念である〈社会的ヘテロフォニー〉に基づく言語・非言語分析を実施することを予定している。具体的には、9月に大阪で開催される学術会議において、研究代表者が主体となって立案・実施する公開企画として上記の漫才師の実演を行うことで、分析用のマルチモーダルデータを収録するとともに、分担者らによるパネルシンポジウムを併せて行うことで、本研究課題の進捗報告と研究意義の外部に向けた発信を計画している。それと並行して、定例研究会を4回程度開催し、代表者と分担者の個人研究の進捗報告とディスカッションに基づく研究連携を模索する。
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Causes of Carryover |
年度末に本研究課題に係わる学会企画の打ち合わせのため東京から研究協力者を招聘したが、旅費精算が大学の事務手続き期限に間に合わず次年度に繰越を行ったため。
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Research Products
(16 results)