Research Abstract |
我々は,1)動物胚の形態形成過程においてマスター調節因子として働く39個のHOX遺伝子が成体においても臓器特異的な発現パターンを示すこと,2)癌組織(口腔癌,食道癌,胃癌,大腸癌,乳癌,肺癌および悪性黒色腫)における39個のHOX遺伝子の発現パターン(HOXコード)は,非癌部組織の発現パターンと異なること,ならびに3)特定のHOX遺伝子の異常発現が,その下位にある多くの標的遺伝子の発現を変化させ,より悪性な癌細胞に変換させることを見い出してきた.これらの事実は,HOXコードの乱れが癌の悪性化に関与していることを示唆している.本研究の目的は,癌特異的なHOXコードの異常が引き起される原因を明らかにすることである.HOX遺伝子の発現を調節する機構として,ポリコーム遺伝子群によるサイレンシングやトリソラックス遺伝子群による転写活性化の維持が知られている.最近,このようなHOX遺伝子の発現調節機構の他に,non-codingRNAに属するマイクロRNA(miRNA)によるHOX遺伝子のサイレンシングが報告されるようになってきた.我々は,HOXクラスター内で作り出されるmiRNAに注目し,これらのHOX遺伝子の発現に対する影響を,matureタイプのmiRNAを細胞内へ導入することによって調べた.その結果,miR-196aが39個のHOX遺伝子のうちHOXA7HOXB8およびHOXD8の発現を抑制することがわかった.HOXA7およびHOXD8の発現抑制は,precursorタイプのmiR-196a-1を用いても,matureタイプと同様に認められた.HOXA7のmRNAは2018bよりなるが,miR-196aは3'-UTRの1100bから1350bの領域に結合し回断している可能性がルシフェラーゼ・アッセイなどの実験から示唆された.
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