2006 Fiscal Year Annual Research Report
H.pylori感染から胃発癌に至る過程におけるREG蛋白の役割の解明
Project/Area Number |
18012029
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
千葉 勉 京都大学, 医学研究科, 教授 (30188487)
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Keywords | RegIα / RegIV / H.pylori / STAT3 / IL6 / IFNγ / アポトーシス |
Research Abstract |
(1)H.pylori感染胃粘膜、および胃癌組織において、RegIαの遺伝子、蛋白、さらにRegIVの強い遺伝子発現が見られた。この胃炎におけるRegIαの発現は、胃炎の強さと相関していた。またRegIαの発現はリン酸化STAT3の染色の強度とも相関していた。 (2)In vitroの実験において、H.pyloriそのものにはRegIαを直接刺激する作用はなかったが、IL6,IFNγはともにRegIαの発現を強く刺激した。さらにその際IL6によるReglαの発現亢進はSTAT3のリン酸化の増加と一致しており、かつSTAT3の活性阻害はIL6によるReglαの発現増強を抑制した。またRegIα遺伝子の上流にIL6-responsive elementを同定したが、それはSTAT3のresponsive siteと一致していた。 (3)一方RegIV遺伝子の発現は種々のサイトカインによっては誘導されず、EGF, VEGFなどの増殖因子によって強く誘導された。 (4)Reglαの投与はヒト胃粘膜細胞のアポトーシスを著明に抑制した。Caspase3の活性も抑制した。さらにその抗アポトーシス作用はAktの活性化を介しておこなわれており、BclxLの発現増強をともなっていた。一方RegIαの中和抗体を投与するとヒト胃粘膜細胞のアポトーシスが強く促進された。以上よりRegIαは胃上皮細胞あるいは胃がん細胞から分泌されて、パラクリン、オートクリン的に作用しているものと思われた。 (5)以上の結果をまとめると、H.pylori感染によって胃炎が生じると、それに伴って発現増強したIL6やIFNγなどのサイトカインによって胃粘膜にRegIαが、また増殖因子によってRegIVが誘導されるが、これら発現増強したREG蛋白はその抗アポトーシス作用をパラクリン、オートクリン的に発揮することによって、胃癌の発症進展に関わっているものと考えられた。
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