2007 Fiscal Year Annual Research Report
プリンヌクレオチドの脱アミノ化に起因する突然変異と発がん
Project/Area Number |
18012035
|
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
作見 邦彦 Kyushu University, 生体防御医学研究所, 准教授 (50211933)
|
Keywords | ITPase / イノシン / 突然変異 / ヌクレオチド / ATP / ヌクレオチドプール / 化学修飾 / 発がん |
Research Abstract |
酸化と脱アミノ化は核酸,特にプリンヌクレオチドの生体内における化学修飾の代表的なものである。dATPとdGTPはそれぞれ,酸化されると2-OH-dATPと8-oxo-dGTPが生じ,また脱アミノ化されるとdlTPとdXTPになる。これらの修飾ヌクレオチドは元のヌクレオチドとは異なる塩基と対合する性質を有しており,突然変異ひいては発がんの原因となると考えられる。我々は,脱アミノ化プリンヌクレオチドが生体に及ぼす影響を解析するために脱アミノ化プリンヌクレオシド3リン酸を分解する酵素,ITPaseをコードする遺伝子のノックアウトマウス(Itpa遣伝子欠損マウス)を作製,解析を行った。Itpa遺伝子ホモ欠損マウスは成長遅延を呈し,生後14日前後で死亡した。生化学的解析より赤血球にITPの蓄積が,また複数臓器のRNAにイノシンヌクレオチドの蓄積が確認された。このことは,脱アミノ化プリンヌクレオチドが細胞内で確かに産生していること,ITPaseはこれらの修飾ヌクレオチドを分解する役割を担っていることを示している。また,ここで観察されたItpa遺伝子欠損マウスの表現型を説明するためには,その原因となっているITPaseの主な基質はdITPであると考えるよりrITPであると考えた方が適当であると考えられる。 C57BL/6Jにバッククロスを行ったところ,Itpa遺伝子ホモ欠損マウスは6世代目を越えた頃から隼まれなくなった。 現在ヘテロで10世代を越えたところである。Itpa遺伝子欠損MEF細胞,マウスではヘテロでも染色体異常が観察されている。未だ未解明の部分が多いItpa遺伝子欠損マウスであるが,デオキシヌクレオチドプール中のdITPの除去を行うことで発がん抑制に寄与している可能性を含め,ITPaseの生体における機能を明らかにしていきたいと考えている。
|