2006 Fiscal Year Annual Research Report
酸化ストレス誘発発がんの抑制に関与する分子機構の解明
Project/Area Number |
18012036
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
續 輝久 九州大学, 大学院医学研究院, 教授 (40155429)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中津 可道 九州大学, 大学院医学研究院, 助教授 (00207820)
日高 真純 九州大学, 大学院医学研究院, 学術研究員 (80238310)
八尾 隆史 九州大学, 大学院医学研究院, 助教授 (20243933)
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Keywords | 遺伝子 / 核酸 / 癌 / ゲノム / 動物 / 活性酸素 / 突然変異 / 消化管 |
Research Abstract |
1.Mutyh遺伝子欠損マウスでの自然突然変異の解析において、G:C→T:A型トランスバージョン変異の有意な上昇が認められたことを踏まえ、酸化剤である臭素酸カリウムを飲水投与したマウスでの小腸における突然変異の解析を行った。その結果、対象群と比較して、酸化ストレスを誘発したMutyh遺伝子欠損マウスにおいて、突然変異頻度の上昇と共に、G:C→T:A型の変異の有意な増加を認めた。 2.これまでの自然発生腫瘍の解析では、Mutyh遺伝子欠損マウスでは、小腸・大腸における腺腫・腺癌の発生頻度が野生型マウスに比べて有意に上昇している。今回、酸化ストレスを与えた条件下での消化管における腫瘍発生につき、生後4週齢のマウスに臭素酸カリウムを16週間連続飲水投与して調べた結果、Mutyh遺伝子欠損マウスの十二指腸・空腸で多数の上皮性腫瘍の発生を認めた。 3.Mutyh遺伝子欠損マウスは消化管における酸化ストレス誘発腫瘍の分子病態を解析するのに有用なモデル系であると考え、酸化ストレスによって誘発される小腸腫瘍の発生に関わる標的遺伝子の検察、変異解析を進めた。先ず小腸に発生した腫瘍組織からDNAを抽出し、Apc遺伝子の散発性大腸がんで突然変異が集中して認められている領域を含むエクソン15の前半分部分をPCRで増幅して変異解析を行ったところ、約30%の検体から突然変異を検出した。これらの突然変異は全てG:C→T:A型のトランスバージョン変異であった。 4.Apcと同様にWntシグナル伝達経路で重要な働きをしているβ-カテニンをコードするCtnnb1遺伝子について変異解析を行ったところ、半数以上の腫瘍において、GSK3βによるリン酸化部位と考えられている33番目のセリンおよびその両隣、並びに37番目のセリンをコードしている部位に突然変異が検出された。その突然変異は、1例を除き全てG:C→T:Aのトランスバージョン型変異であった。最近、劣性の家族性大腸腺腫症患者でMUTYH遺伝子に変異が見出され、腫瘍組織においてAPC遺伝子上にG:C→T:A型の変異が検出される事例が報告されている。現在進めているMutyh遺伝子欠損マウスへの薬剤投与による酸化ストレス誘発発がんの研究を展開することにより、発がんの分子機構を解析できる見通しが示された。
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