2006 Fiscal Year Annual Research Report
G1期サイクリン発現によるゲノム不安定化の分子機構
Project/Area Number |
18012048
|
Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
田中 誠司 国立遺伝学研究所, 細胞遺伝研究系, 助手 (50263314)
|
Keywords | がん / ゲノムの安定性 / G1期CDK / DNA複製 |
Research Abstract |
がんは正常な増殖制御を失い異常増殖する細胞の集団であり、多くのがん細胞は、G1期CDKの活性化経路に異常を持ち、正常細胞に対し増殖優位性を示すとともに、ゲノムの不安定化もその大きな特徴として観察される。研究代表者はこれまでに、真核細胞のモデルである出芽酵母を用いて、G1期CDKの異常活性化がゲノムの不安定化を誘導することを示した。本研究では、このゲノムの不安定化がどのような過程を経て生じるのかを明らかにすることを目的とし、解析を進めている。 これまでに得られた結果はG1期CDKの異常活性化がゲノムDNA複製の効率を低下させることを示唆している。そこで、複製フォークが長時間存在することでゲノムの不安定化が引き起こされるという仮説を立て、出芽酵母を用いてその検証を行った。まず、複製フォーク進行を阻害し、複製終了を遅延させるような配列の有無がゲノムの安定性に直接影響を与えるかどうかを調べた。その結果、そういった配列の導入により、染色体の転座、欠失等を含むGross Chromosome Rearrangement(GCR)の大幅な増加が見られた。この時G1期CDKの異常活性化を同時に起こさせても、野生型で観察されるほどのさらなる上昇はなかったことから、複製フォークの進行異常がG1期CDKによるゲノム不安定化に大きく寄与していることが示唆された。また、G1期CDKは、S期CDKを間接的に活性化し、DNA複製を開始させる。また最近、研究代表者はCDK活性がなくてもDNA複製を開始する変異体を単離することに成功し、その解析から、S期開始に必須なCDKリン酸化ターゲットを決定した。現在、これらのリン酸化ターゲットに変異を導入し、DNA複製開始に影響を与えるような環境下で、ゲノムの安定維持に影響が観察されるかどうかも解析している。
|
Research Products
(2 results)