2007 Fiscal Year Annual Research Report
G1期サイクリン発現によるゲノム不安定化の分子機構
Project/Area Number |
18012048
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Research Institution | National Institute of Genetics |
Principal Investigator |
田中 誠司 National Institute of Genetics, 細胞遺伝研究系, 助教 (50263314)
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Keywords | がん / ゲノムの安定性 / G1期CDK / DNA複製 |
Research Abstract |
がんは正常な増殖制御を失い異常増殖する細胞の集団であり、多くのがん細胞は、G1期CDKの活性化経路に異常を持ち、正常細胞に対し増殖優位性を示すとともに、ゲノムの不安定化もその大きな特徴として観察される。研究代表者はこれまでに、真核細胞のモデルである出芽酵母を用いて、G1期CDKの異常活性化がゲノムの不安定化を誘導することを示した。本研究では、このゲノムの不安定化がどのような過程を経て生じるのかを明らかにすることを目的とし、解析を進めた。 これまでの解析からG1期CDKの異常活性化がゲノムDNA複製の効率を低下させること、染色体の転座、欠失等を含むGross Chromosome Rearrangements(GCRs)の大幅な増加を引き起こすことが分かっていた。この過程においては、停止あるいは長時間存在する複製フォークが染色体異常を誘導すると予想し、複製フォークを遅延させるような配列を用いてGCR発生率を計測し、実際にこういった配列がGCRを増加させることを見いだした。したがって、複製フォークの進行異常がG1期CDKによるGCR増加に大きく寄与していることが示唆された。G1期CDKは細胞を細胞周期にコミットさせ、G1/S期特異的転写を活性化する。研究代表者らが最近同定した複製開始におけるCDK基質のうちのひとつであるSld2はG1/S期特異的に転写が活性化し、タンパク量も増加する。G1期CDKの異常活性化はSld2のような因子の異常活性化につながることが予想されるが、実際Sld2の恒常的高発現はGCR頻度をさせることが分かった。また、別の系で、G1期CDKを異常活性化させた時に、GCRではなく異数体が高頻度に出現することも見いだした。これらの結果は、G1期CDKの異常活性化によるゲノムの不安定化にはここに示したような複数の経路があることを示している。
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Research Products
(8 results)