Research Abstract |
不死化子宮頸部由来正常細胞株にHPV16ゲノムを導入することで数10-100コピーのHPV16ゲノムをepisomalに維持する細胞株の樹立に成功した.この細胞は従来報告されているものと異なり,feeder細胞なしに長期間維持出来ることが明らかになった.子宮頸部異形成由来の細胞株W12などと異なり,これまでHPVゲノムの細胞ゲノムへの組み込みは確認されていない.この細胞株を用いることで,episomal HPV16ゲノムの維持と組み込み機構ならびに,がん化の引き金になるE6とE7遺伝子の高発現に至る機構の解析が再現性良くできると考えている.この細胞でDNA-PKcs,Ku70,Ku86など非相同組み換え修復に関わる遺伝子発現をノックダウンした.これまでのところ,組み込み頻度への影響は確認出来ていないが,Ku70,Ku86をそれぞれ単独でノックダウンするとKu70,Ku86の両者の蛋白量が減少しDNA-PKcs蛋白量も減少する傾向が見られた.<BR> DNA-PK活性と子宮頸癌との相関は,統計学的に確かであるが,原因が分からずその解明は非常に重要である.DNA-PK活性の個人差が出てくる理由の追及を進め,DNA-PKcs,Ku86,Ku70の発現調節にE2Fファミリーが制御に関わっている可能性を見出した.具体的には,8名(がん患者4名,健常者4名)のリンパ球のマクロアレイ解析を行い,DNA-PK活性やサブユニット発現と相関が強い分子を探索した.その結果,Rap1B,Rad9,XRCC3,SUMO,E2F1,Cyclin D1などの発現が正の相関を示し,逆に,強い逆相関を示したものとしてRbp130が見いだされた.このことから,E2Fファミリーが調節に関わっている可能性を考えられたが,実際,DNA-PKcs,Ku86,Ku70全てのプロモータ領域にE2Fのbinding siteが見つかり,PHAで刺激するとDNA-PK活性とともに,mRNA発現上昇も見られた.更にこれを検証するためには,siRNAなどを用いた実験を進めている.また,E2F以外の転写調節機構が関わる可能性も検討していく必要がある。
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