Research Abstract |
C型肝炎ウイルス(HCV)は肝臓細胞に持続感染し,慢性肝炎,肝硬変を引き起こし,高頻度に肝細胞癌を発生させる。我々は,現在までに,全長HCV遺伝子を発現する細胞において活性酸素(ROS)の過剰産生力が認められ,その細胞ゲノム中に塩基損傷修復の中間体,AP部位の量が上昇する事を示し,HCVが引き起こすROSの過剰産生が積極的にDNAの障害に関わる事示唆している。更にHCVのMSIへの関与を解析する目的で,マイクロサテライトマーカー様配列(CA)の下流にハイグロマイシン耐性遺伝子をアウトフレームに連結したレポーター遺伝子を,レンチウイルス遺伝子導入系を用いて作成し,レポーター遺伝子を肝細胞株に導入後,同細胞にHCV各遺伝子を発現するレンチウイルスを感染させ,MSIアッセイを行った。その結果,HCV Core,NS4B,NS5A,NS5Bの発現に伴いハイグロマイシン耐性コロニーの形成能が上昇した。ゲノム中に挿入されたレポーター遺伝子の塩基配列を決定した結果,NS4B,NS5Aの発現細胞で,アウトフレームからインフレームへのCA長の変化を伴うCA配列の不安定性が認められた。一方,HCV Core,NS5Aに関してはCA長の変化なしに,ハイグロマイシンへの耐性を獲得していた事から,MSIとは別に転写後レベルで,ハイグロマイシン耐性遺伝子の発現を調節する可能性が考えられた。また,酸化ストレスがMSIに関与するとの報告がある事から,各HCV遺伝子発現細胞のROSレベルを酸化ストレスに対する蛍光基質,DCFHを用いたで定量したが,コロニー系性能との顕著な相関は認められなかった。以上から,HCVはNS4B,NS5B等の発現により,酸化ストレスの上昇とは異なるメカニズムによって,MSIを引き起こし,遺伝子不安定化に寄与する事が示唆された。現在,その機序を明らかにする目的で,MSIに関わるミスマッチ修復関連因子群の発現解析を進めている。
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