2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18012057
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Research Institution | Aichi Cancer Center Research Institute |
Principal Investigator |
長田 啓隆 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学部, 室長 (30204176)
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Keywords | 肺癌 / 細胞分化 / 転移 |
Research Abstract |
神経内分泌分化肺癌は小細胞癌や一部の大細胞癌からなる高悪性度肺癌であり、この特殊な細胞分化と癌悪性化との関連が注目されている。我々はこのような肺癌の生存と増殖が、肺における神経内分泌分化の規定因子ASH1の構成的発現に依存性を示すことを報告した。その分子機序の解明を目指し、神経内分泌分化を有しない肺腺癌細胞株にASH1を導入したところ、浸潤転移に係わる足場非依存性が顕著となり、更に、マウス移植腫瘍では、肺腺癌から神経内分泌分化肺癌の組織型への顕著な変化が誘導され、腫瘍増殖も促進した。また、このような形質変化の分子機序として、ASH1が癌抑制遺伝子のE-カドヘリンやWntシグナル抑制因子DKK1の発現を抑制することを見出し、更にその発現制御の分子機序として、ASH1が特異なパターンの抑制性ピストン修飾を誘導することを明らかにした。今後このピストン修飾の分子機序を解明するとともに、ASH1による遺伝子発現制御により引き起こされるシグナル経路異常を明らかにし、神経内分泌分化肺癌の治療戦略へと繋げていく予定である。このASH1機能の研究は、細胞分化を規定する遺伝子の構成的発現に対する癌細胞の依存性という、新しいパラダイムへ発展することが期待できる。 同時に新規転移関連遺伝子CLCP1の機能の解析も進めた。CLCP1を高発現している高転移1生肺癌細胞株で、CLCPIをノックダウンしたところ、細胞運動能の著明な低下が見られ、CLCP1が細胞運動能を促進することが判明した。又、ファージディスプレイ法を用い、CLCP1のリガンドとして癌関連遺伝子Semaphorin4B (SEMA4B)を同定した。CLCP1とSEMA4Bは、細胞表面で共局在し相互作用するが、その相互作用によりCLCP1のプロテアソーム依存性分解が誘導された。今後このCLCP1-SEMA4B相互作用の詳細と、リガンド依存性のCLCP1分解の制御機構を検討し、CLCP1の機能を調整する新規転移抑制治療へ発展させたい。
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