2007 Fiscal Year Annual Research Report
ATR複合体の複製期特異的機能と発がん過程への関与
Project/Area Number |
18012059
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
松浦 彰 Chiba University, 大学院・融合科学研究科, 教授 (10272692)
|
Keywords | 染色体 / 複製 / リン酸化 / ATR / Cdc2 / 細胞周期 / 細胞老化 |
Research Abstract |
染色体不安定性症候群ataxia telangiectasiaの原因タンパク質ATMとそのパラログであるATR(ATR and rad3-related)はDNA損傷チェックポイントの最上流で働くプロテインキナーゼである。ATRは、DNA損傷や複製阻害など多様なDNA傷害の監視に関与し、その機能欠損は切断された染色体の蓄積をもたらすため、ATRノックアウト細胞は致死となる。ATRIP(ATR-interacting protein)はATRと常に複合体を形成するタンパク質であり、発現抑制がもたらす表現型の類似性からATRの機能発現に必須な因子であることが示唆されている。今年度は、ATR-ATRIP複合体によるゲノム監視機構について、以下の点が明らかとなった。 1.ATRIPの新規リン酸化部位の同定と機能解析 質量分析により、ATRIPの新規リン酸化部位を見いだした。この部位のリン酸化は、通常の細胞周期中でも観察され、ゲノムストレスを誘発する薬剤によってそのリン酸化の増加はみられなかった。また、このリン酸化はATR非依存的であった。 このリン酸化に必要なキナーゼを検索した結果、細胞周期の進行に関わるCdc2キナーゼが関与している可能性が示唆された。しかしながら、このリン酸化部位をアラニンに置換した変異型ATRIPタンパク質を高発現している細胞において、細胞周期進行において顕著な異常はみられなかった。また、このリン酸化がスピンドル傷害を与える薬剤の添加により増加することを見いだしたが、スピンドル傷害に対する細胞の感受性も変化がみられなかった。 2.ATR-ATRIPの量的制御機構 ATRIPを外来プロモータにより高発現させると内在性ATRIPの発現が劇的に減少する。この調節にはATRとの相互作用に必須なATRIPの相互作用が必要であることを見いだした。またATR-ATRIP複合体の発現量は細胞老化の過程で減少することを見いだした。
|