2007 Fiscal Year Annual Research Report
がん細胞の運動能と浸潤・転移能亢進におけるコフィリン制御系の役割
Project/Area Number |
18013007
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
水野 健作 Tohoku University, 大学院・生命科学研究科, 教授 (70128396)
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Keywords | アクチン骨格 / 細胞運動 / 癌浸潤 / LIMキナーゼ / コフィリン / Slingshot |
Research Abstract |
癌の悪性化に伴い、癌細胞は運動能、接着能を変化させ、浸潤・転移能を獲得する。アクチン細胞骨格の再構築は細胞運動、接着の制御において中心的な役割を担っており、癌細胞の浸潤・転移においても重要な役割を果たしていることが知られている。アクチン脱重合因子であるコフィリンはアクチン再構築を制御する主要因子であり、LIMキナーゼによりリン酸化(不活性化)され、Slingshotにより脱リン酸化(活性化)される。本研究では、LIMキナーゼとSlingshotが癌細胞の運動、接着能の制御、浸潤・転移能の獲得において果たす役割を解明することを目的として研究を行った。まず、単層培養したラット腹膜中皮細胞上にラット腹水肝癌由来のMM1細胞を重層し、リゾホスファチジン酸存在下でMM1細胞が中皮細胞層を通過する実験系を用いて、癌細胞の細胞層通過運動能を測定した。RNA干渉法でコフィリン/ADF、Slingshot-1/2、LIMキナーゼ1の発現を抑制すると、MM1細胞の細胞層通過運動能が抑制されることを解明した。また、LIMキナーゼ1の発現抑制は細胞運動と細胞接着を、コフィリン/ADF、Slingshot-1/2の発現抑制は細胞運動を阻害することを示し、コフィリン/ADF、Slingshot-1/2、LIMキナーゼ1の細胞運動、接着における機能を解明した。次に、癌細胞が細胞外マトリックスを分解するために作るインベイドポディア形成におけるこれらの分子の機能を検討した。ヒト乳癌由来のMDA-MB-231細胞においてコフィリン/ADF、Slingshot-1/2、LIMキナーゼ1の発現を抑制するとインベードポディア形成が抑制されることを見出した。以上の結果から、コフィリン/ADF、Slingshot-1/2、LIMキナーゼ1は、癌細胞の浸潤において重要な役割を果たしていることが解明された。
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