2006 Fiscal Year Annual Research Report
癌浸潤・転移におけるβ1インテグリン及び関連分子の役割の解明と臨床応用の探索
Project/Area Number |
18013017
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森本 幾夫 東京大学, 医科学研究所, 教授 (30119028)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岩田 哲史 東京大学, 医科学研究所, 産学官連携研究員 (00396871)
矢持 忠徳 東京大学, 医科学研究所, 産学官連携研究員 (80306844)
山崎 裕人 東京大学, 医科学研究所, 産学官連携研究員 (80376623)
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Keywords | β1インテグリン / Cas-L / TGF-β / Nck / Lipid raft / Smad / 細胞遊走 / 接着分子 |
Research Abstract |
β1インテグリン分子は、接着分子としてのみならずシグナル伝達分子として、がん細胞の転移、浸潤、生存、増殖に関与する。本研究は、インテグリン刺激によってチロシンリン酸化される分子として我々が確立したCas-Lに関して以下の課題について解析した。 1)Cas-LとTGF-βシグナル伝達抑制分子Smad6,7との相互作用の解析 我々は、293T細胞を用いた過剰発現系とヒト肝癌細胞株Huh-7における、Smad6,7とCas-Lの結合及び共局在を明らかにした。siCas-L, siSmad6,7を用いた解析により、Cas-LとSmad6,7との相互作用は、TGF-βによる細胞増殖抑制作用及び転写活性化作用を亢進することを明らかにした。TGF-βは細胞の癌化・転移に重要な役割を果たす多機能サイトカインであり、今後、EMT (epithelial-mesenchymal transition)を含め発がんプロセスにおけるCas family蛋白の役割の解明が急務である。 2)NckとCas-Lの相互作用とその細胞遊走に対する生物学的意義の検討/Cas-Lノックアウトマウスの解析 Nckは、SH2及びSH3ドメインからなるアダプター分子であり、細胞骨格系の制御に関わるWASP等の蛋白と結合する。我々は、インテグリン・T細胞受容体刺激により、Cas-Lのチロシンリン酸化依存的にNckとCas-Lが結合することを見出した。この結合は、lipid raftにおいて起こること、RNAiによるCas-Lの抑制は細胞遊走能の低下を招くことを明らかにした。さらに、Cas-Lノックアウトマウス由来T cellを用いて、ケモカインSDF-1によるNckのraftへのリクルートにはCas-Lが必要であることが示された。これらの事から、Cas-Lのraftへの局在は、細胞遊走における重要な役割を果たしている可能性が示唆された。
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