2006 Fiscal Year Annual Research Report
細胞接着に果たすRho標的蛋白質の役割と細胞悪性化への寄与
Project/Area Number |
18013029
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石崎 敏理 京都大学, 医学研究科, 助手 (70293876)
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Keywords | Rho / mDia / 細胞接着斑 / 細胞移動 / Src / Apc / 微小管 |
Research Abstract |
細胞遊走は、癌転移など多くの生命現象の要である。細胞は遊走刺激に応じ、移動方向前後で異なった極性を獲得し、アクチンや微小管などの細胞骨格を再編して、細胞接着斑を回転させながら方向性をもった移動を行う。細胞遊走には様々な情報伝達経路が働いているが、これまでの解析から、Rhoファミリーの中でCdc42が細胞極性に、Racがアクチン網形成を介して細胞前縁での膜突出に働くことが報告されているが、Rhoの役割には不明な点が多い。本研究では、Rat C6神経膠腫細胞の遊走におけるRho-mDia1経路の働きを解明した。ケモカインSDF1αに対する遊走やin vitroのwound-healing assayを用いて、ボツリヌス菌菌体外C3酵素によりRhoを不活化したC6細胞あるいはRNAiによりmDia1を枯渇した同細胞では、移動の方向性と細胞体の移動の両方が障害されることを見出した。さらに、mDia1枯渇細胞では、移動方向に向けた微小管の安定化や細胞前縁での活性化Cdc42やApcの集積が阻害され、その結果として極性の阻害が起こること、また、mDia1枯渇細胞では細胞接着斑の回転が顕著に抑制され、細胞体の移動が阻害されていた。加えて、mDia1枯渇細胞では、活性化c-Srcの細胞接着斑への集積が阻害されるため、接着斑の回転が起こらないことも明らかになった。以上の結果は、Rho-mDia1経路が、Apc、Cdc42の局在を制御して細胞極性の決定を行うとともにc-Srcの接着斑への集積を調節して細胞の移動に寄与するという細胞移動で中心的な2つの機能を果たしていることを明らかにしたものである。 また、mDia1に対する新規結合蛋白質を同定した。その分子のmDia1結合領域の過剰発現によりアクチン細胞骨格の再編が促進されているような知見を得ており、詳細について解析中である。
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