2006 Fiscal Year Annual Research Report
胸膜中皮腫の新規接着分子SgIGSF:胸膜面瀰慢性病変形成への関与の可能性
Project/Area Number |
18013033
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
伊藤 彰彦 神戸大学, 大学院医学系研究科, 助教授 (80273647)
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Keywords | TSLCI / Neci-2 / SynCAM / CADM1 / 共生培養 / Shedding |
Research Abstract |
SgIGSF (spermatogenic immunoglobulin superfamily)は、免疫グロブリン・スーパーファミリーに属する細胞間接着分子で、ホモフィリックとヘテロフィリックの両方の様式で結合する。今までに非小細胞肺癌抑制因子としての性格付けと、成人T細胞白血病で高発現しその高浸潤能形質に寄与する分子との性格付けとがある。 研究代表者は細胞内領域認識抗体を用いた免疫組織化学により、ヒト悪性胸膜中皮腫ではその多くでSgIGSFが高発現していることを見出した。最近の検討によりその染色態度には2通りあることがわかった。1つは細胞質全体にシグナルを認めるもので、全体の約半数を占める。もう1つは細胞膜上にシグナルを認めるもので、約3割に相当する。即ちSgIGSFは、前者では接着分子として機能していないが、後者では機能していると考えられる。SgIGSFの細胞質内局在は正常或いは反応性胸膜中皮細胞でも認められており、細胞外ドメインがsheddingされた後にinternalizationするという分子機構を現在証明中である。 種々のヒト胸膜中皮腫細胞株を入手したところ、SgIGSFを発現しているものとしていないものがほぼ半数ずつであった。コロニー形成アッセイにより足場依存性増殖能について両者を比較すると、肺癌抑制因子との性格付けに一致して、後者は多数のコロニーを形成出来たのに、前者は出来なかった。次いで、中皮腫細胞に発現するSgIGSFが中皮腫の胸膜面瀰慢性病変形成に関与するかどうかについて調べるため、正常中皮細胞単層培養と中皮腫細胞株との共生培養系を樹立した。SgIGSFを発現していない中皮腫細胞株は正常中皮細胞単層培養上をpile upしながら縦方向への増殖形態を好んで示したのに対して、SgIGSFを発現している細胞株はpile upすることなく平面的に横方向へ広がりながら増殖した。以上の結果より、中皮腫細胞に発現するSgIGSFは中皮腫細胞と中皮細胞との接着媒介においてユニークな役割を果たしており、中皮腫に特徴的な進展様式に関与している可能性が示唆された。
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