2006 Fiscal Year Annual Research Report
スキルス型癌の間質浸潤におけるリン酸化蛋白質の解析
Project/Area Number |
18013053
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Research Institution | National Cancer Center Research Institute and Research Center for Innovative Oncology, National Cancer Center Hospital East |
Principal Investigator |
田中 正光 国立がんセンター(研究所及び東病院臨床開発センター), 細胞増殖因子研究部, 室長 (20291396)
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Keywords | スキルス癌 / 胃癌 / リン酸化 / Eph / ephrin |
Research Abstract |
浸潤性の高いいくつかのヒトスキルス型胃癌細胞において、ephrin-B1の発現量、およびそのリン酸化レベルの充進がみられ、それらの癌細胞からephrin-B1の発現をsiRNAによって低下させると細胞の移動、浸潤能の抑制をみとめた。同スキルス型胃癌細胞はマウスの腹腔内で著明な腹膜播種をきたすが、ephrin-B1の細胞内領域でリン酸化を受けるチロシン残基をアミノ酸置換した変異体をそれらの癌細胞に強制発現させたところ、その腹膜播種が抑制され、また正所性に胃壁内に移植した癌細胞の周囲組織やリンパ管への浸潤、および所属リンパ節への転移も阻害された。またそれと別にEph-ephrinのスキルス型癌細胞の浸潤制御に関わる信号経路として、ephrin-B1のC末に依存した信号伝達がArfの活性化を介してMMP(-8)の細胞外分泌過程を促進し、そのことが癌細胞の周囲基質の分解をともなう組織浸潤に寄与しているという新規機能がみられた。一方、当研究所で樹立されたスキルス型胃癌由来の細胞株を用いて、in vitroにおける通常培養状態よりも、ヌードマウスの腹腔内注入により形成された癌の浸潤組織において、よりチロシンリン酸化が亢進している蛋白質の精製を行った。そのうち、特にSrcファミリーと結合能を有することに着目して精製した蛋白質を質量分析で解析した結果では、現時点でSrcファミリーの基質として知られる細胞膜貫通型蛋白質や、低分子量G蛋白質に対するGAP活性をもつものなどがスキルス胃癌の間質浸潤に相関していた。それらの蛋白質のリン酸化を介した信号が、どうスキルス胃癌の浸潤に寄与しているかを解析中である。
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