2006 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
18015010
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
北村 俊雄 東京大学, 医科学研究所, 教授 (20282527)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
川島 敏行 東京大学, 医科学研究所, 助手 (10306839)
|
Keywords | STAT3 / 癌 / 低分子化合物 / 阻害剤 / IL-6 |
Research Abstract |
今年度は既に同定していた3種のSTAT3阻害剤の解析とSTAT3阻害剤スクリーニングを利用したスクリーニングを行った。また、基礎的な実験としてSTAT3の核移行のメカニズムの解析も行った。 我々が開発したSTAT3阻害剤スクリーニング法(東京大学ライセンシング事務所TLOより特許申請済)によって同定した低分子化合物のうち、骨髄腫細胞株の増殖抑制効果が最も強いT002の作用機序を調べた。T002は、STAT3とJAK1/2の活性化を抑制すること、STAT5活性化も抑制することが判明した。興味深いことにT002を作用させた骨髄腫細胞では、逆にERK1/2が活性化されていた。T002は構造的にはキナーゼ阻害剤とは異なる。JAKをはじめとするチロシンキナーゼ、ERKをはじめとするセリンスレオニンキナーゼに対する阻害効果をin vitroキナーゼアッセイで調べた結果も、T002がキナーゼ阻害剤ではないことを示した。T002は20マイクロMの濃度でヒト骨髄腫細胞株KT3およびINA6のin vitro増殖をほぼ完全に抑制したので現在担癌マウスに対する治療効果を調べる準備をしている。ヒト1L-6依存性細胞株KT3とINA6はSCIDマウスでも腫瘍形成しないため、1L-6非依存性ヒト骨髄腫細胞株KMM1による担癌マウスを作成した。 共同研究で行う予定だった米国のベンチャー企業とは先方の都合でSTAT3阻害剤スクリーニングを行わないことになった。かわりに日本の製薬会社と共同研究を開始し、30万化合物の1次スクリーニングがほぼ完了した。本年度は、2次スクリーニングの結果得られたた化合物について詳細な解析を行う予定である。 一方、我々はSTAT3および5に関する基礎的研究も行っている。転写因子STAT3およびSTAT5には明らかな核移行シグナルがないが、最近我々はRac1およびMgcRacGAPが活性化されたSTAT3/5のヌクレアーシャペロンとして働くこと(Kawashima et al.J Cell Biol,2006)、MgcRacGAPはJAK2に結合することを明らかにした(未発表)。これらの結果は大変注目され海外からの取材依頼が2件あり、Nature Rev Mol Cell Bio1誌でも紹介された。化合物T002がキナーゼ阻害剤でないにもかかわらずJAKおよびSTAT両者の活性化を阻害することから、この化合物がRac1/MgcRacGAPの系を抑制する可能性もあり、今後検討する予定である。
|
Research Products
(6 results)